Queer/クィア(2024)
Queer
監督:ルカ・グァダニーノ
出演:ダニエル・クレイグ、ドリュー・スターキー、レスリー・マンヴィル、ジェイソン・シュワルツマンetc
評価:30点
おはようございます、チェ・ブンブンです。
第81回ヴェネツィア国際映画祭にて上映されたルカ・グァダニーノ監督新作『Queer/クィア』。本作はウィリアム・バロウズの「おかま」を映画化したものとなっており、ウィリアム・バロウズ好きには期待と不安が高まった。ようやく観たのだが、ルカ・グァダニーノのウィリアム・バロウズ像は解釈不一致すぎて残念な結果となった。
『Queer/クィア』あらすじ
In 1950s Mexico City, an American immigrant in his late forties leads a solitary life amidst a small American community. However, the arrival of a young student stirs the man into finally establishing a meaningful connection with someone.
訳:1950 年代のメキシコシティで、40 代後半のアメリカ人移民が小さなアメリカ人コミュニティの中で孤独な生活を送っています。しかし、若い学生の到着がきっかけで、彼はついに誰かと意味のある関係を築くことになります。
ルカ・グァダニーノのウィリアム・バロウズ像解釈不一致
「おかま」は「ジャンキー」の続編にあたり、ヘロイン断ちしたウィリアム・バロウズがアメリカ海軍を除隊したアルバート・ルイス・マーカーを拠り所にした経験が反映されている。物書きとして苦闘する中で書かれた本書は、20年近く日の目を見ることなく、彼の知り合いの間で回し読みされていた幻の作品でもある。
バロウズの分身である作家のリーがメキシコシティのゲイバーを彷徨う中でアラートンと出会い惹かれ合う。映画の前半では、リーがアラートンへ惹かれるも、それを弄ぶかのように、ひらり交わし「おじにウザがられている青年像」を浮き彫りにしていく。
第二部では、リーがテレパシー能力を持つ植物「ヤゲ」を見つけるために南米エクアドルのジャングルを冒険する内容となっており、アル中酩酊状態のリーとマジックリアリズムが絡むものとなっている。
第一部では、ルカ・グァダニーノ監督の美しすぎる画とメキシコに似つかわしくない選曲に頭が痛くなった。一見すると、自堕落な汚さ表現しているようだが、キレイな汚さとなっており、リーの心理的荒廃や原作にあった暴力的な文章が希釈されている。そこに、彼の心理を象徴したような音楽が乗るのだが、完全にノイズとなってしまっている。
第二部は陳腐なマジックリアリズム映画になっており、表層的なビックリシーンがいくつかあるだけとなっている。
しかし、ダニエル・クレイグ視点で観ると話は変わってくる。彼は『愛の悪魔』でフランシス・ベーコンの愛人ジョージ・ダイアーを演じたことがある。泥棒としてベーコン宅に侵入するも、何故か「一緒に寝よう」と夜を共にし、愛人関係になった逸話を描いた作品。ここでは、酒やたばこに依存し自堕落ながらも、飄々とベーコンを弄び、彼の依存心を掻き立てる演技をしていたダニエル・クレイグが、今回ではその対岸へ渡っているのが興味深い。明らかにグァダニーノ監督は本作を意識した心象世界描写を採用しており、エピローグでリーが落下し、異界へたどり着く場面は、『愛の悪魔』でベーコンの世界へ迷い込む様と共鳴しているのだ。