ノーカントリー(2007)
No Country for Old Men(2007)

監督:コーエン兄弟
出演:トミー・リー・ジョーンズ,
ハビエル・バルデム,
ジョシュ・ブローリンetc
評価:70点
ゼミで観たコーエン兄弟代表作。
アカデミー賞作品賞を獲ったり、
キネマ旬報ベストテン1位を獲るなど
高い功績を収めている一方、
ブンブンが7年ぐらい前に観たときに、
あまりの難解さに頭悩まされた
作品である。
果たして…
「ノーカントリー」あらすじ
ベトナム帰還兵はある日、麻薬抗争跡地に残された
大金を持ち帰ってしまう。
すると、麻薬の売人が
殺人マシーンを
仕向け追い詰めていく…
やはり難解でした…
ジョエル&イーサン・コーエンの
作品の中で最もシンプル且つ
難解な作品がこの「ノーカントリー」だ。
漁夫の利のごとく麻薬カルテルの
抗争から大金を盗んだ男、
彼を追うギャングに追われた男、
彼をさらに追う警察官という
三つ巴のサスペンス。
「続・夕陽のガンマン」のように
入り乱れて決闘する場面が
ほとんどないシンプルな
作りとなっている。
しかし、本作がアカデミー賞作品賞、
キネマ旬報ベストテン外国映画1位に
輝き時が経過した今でも
明確な見解を見いだせていない
ところが正直なところである。
今回、タイトルと
ストーリとの関係性に注目して
鑑賞してみた。まず、
本作の原題は「No Country for Old Men」、
つまり老いた者の為の国ではない
というタイトルである。
本作に登場する人物の
展開を観るとこのタイトルに納得がいく。
まず現金を盗んだ男。
昔はベトナム戦争で兵士をしており、
文字通りハンターとして
活躍していた。しかし冒頭の
鹿撃ちのシーンで、
クリティカルヒットを外す。
つまり、腕が鈍っている様子が
映画で描かれているのだ。
また、宿敵シガーに関しても
凄腕の殺し屋として行く先々の
人を殺して回るが、
ラストにあっけなく交通事故で
大けがを負う。
時代の終わりを表している。
そして、老警官も結局シガーと
男の逃走劇を何一つ解決していない。
つまり、老いた者が世代に取り
残された哀しみ、
諦めが映画全体を
包んでいる仕組み
となっているのだ。
夢の描写について
そして、その証拠にやはり
「夢」について語る描写がある。
どんなに前に進めど親父がいると
語る老警官。親父というのは
物語において、超えるべき存在=
エディプス・コンプレックスであり、
超えるべきある存在が
いつまでも残っていると
いう点にどこか哀愁を感じる。
そして、一つ目の夢では
手にした金をなくすという
描写がある。それは、
本作で大金を盗んでしまったが
故に巻き起こったこの騒動、
もし金を盗まなかったら
よかったのではという
「IF」を暗示させる
描写と捉えることができる。
それにしても、ハビエル・
バルデム扮するシガーは
「悪魔の塊」という
印象づけに大成功していると感じる。
冒頭、手錠をひょいと前にやり、
電話している警官ににじり寄り、
笑っているのか怒っているのか
分からないような表情で
絞め殺すシーン。
何を言っても逆ギレする
シガーが店員にコイン当て
クイズを出す緊迫感、
そして空気銃という
犯罪映画史上最も異質
且つ強力な武器で、
人々を恐怖の淵に
追い込んでいく姿は
今観ても恐怖であった。
このようなバイオレントで
難解な作品がアカデミー賞
作品賞を受賞するとは
非常に面白い年だったと感じた。
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