『風と共に去りぬ』その件は明日考えます

風と共に去りぬ(1939)
Gone with the Wind

監督:ヴィクター・フレミング
出演:ヴィヴィアン・リー、クラーク・ゲイブル、レスリー・ハワード、オリヴィア・デ・ハヴィランドetc

評価:90点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

中学以来の再観だったが、めちゃくちゃ面白かった!

『風と共に去りぬ』あらすじ

マーガレット・ミッチェルの同名ベストセラーをビビアン・リーとクラーク・ゲーブルの共演で映画化し、1940年・第12回アカデミー賞で作品賞・監督賞・主演女優賞など10部門に輝いた不朽の名作。南北戦争前後のアメリカ南部を舞台に、炎のように激しく美しい女性スカーレット・オハラの激動の半生を壮大なスケールで描く。南北戦争直前のジョージア州。大地主を父に持つ勝ち気な娘スカーレット・オハラは、思いを寄せる幼なじみアシュリーが彼のいとこと婚約したことにいら立ちを募らせていた。そんな彼女の前に、素行の悪さを噂される男レット・バトラーが現れる。スカーレットはレットの不遜な態度に激しい憎しみを覚えながらも、なぜか彼に惹きつけられる。やがて南北戦争が勃発し、激動の時代の中でスカーレットの運命は大きく翻弄されていく。監督は「オズの魔法使」のビクター・フレミング。

映画.comより引用

その件は明日考えます

アメリカの映画100選系の企画で取り上げられていいることが多く、当然ながら「死ぬまでに観たい映画1001本」に掲載されている作品であるが、意外と日本国内で語られているケースは少ないように思える。

だが、このテクニカラーで撮られた超大作は今観ても全く色褪せないどころか、技術が大きく進歩した21世紀のビッグバジェット映画ですら寄せ付けない不動のスペクタクルと異様とも思えるスカーレット・オハラの行動により心かき乱される。

一方で、『Swallow/スワロウ』『チャイコフスキーの妻』、『エマニュエル』と奥なる存在へと押し込められた女性心理を紐解く作品が増えている今からスカーレット・オハラの行動を分析すると新しい観点が見えてくるように思える。

彼女は南部の白人貴族である。豪華絢爛な空間の中に身を投じているわけだが、白いドレスを動きにくそうに着こなす彼女が象徴するように実は土地に縛られた不自由さを抱えている。今とは違い、気軽に旅行なんかできないし、スマホやPCに広がるキラキラした異世界で暇を潰すことすらできない。だから、好きな男と結ばれることが恍惚とした異世界へと飛び込むことになるのだ。しかし、愛するアシュレーは別の女と結婚し、北軍の襲撃によって今いる場所も故郷も失うのだ。無となった世界の中でひたすら前へ向いて生きる中でレット・バトラーと結婚するのだが、過去への未練が表面化し続け、ついには彼に去られてしまう。異なる世界を求めるプロセスで男から男へ渡り歩いてきたオハラの執念が最後まで「過去にありえた世界線」にあることは興味深い。バトラーに去られるも「とりあえず明日考えよう」と言い始め、しまいには「彼を取り戻す方法は故郷に帰って考えるわ!明日に望みを託して!」と明日どころか明後日のベクトル向き人生が続いていく斬新な着地となる。

スペクタクル面では、中盤の北軍が南部を攻める場面は圧巻である。縦横無尽に混沌とする街を捉えていく。爆撃の音が空間を繋ぎ合わせ、人流に逆らうようにオハラが駆けていき、それをバトラーが見つける。教会では牧師が聖書を読み上げている。キリストのステンドグラスが爆撃により一部が破損するものの、彼は狼狽えることなく読み続ける。カメラは下へとパンをしていき、破片を片付けようとする女性を捉えるなど、カット割りはもちろん、長回しも洗練されたものとなっているのだ。