『夜顔』片思い世界~ねっとりおじVS熱い娼婦の眼差し

夜顔(2006)
Belle Toujours

監督:マノエル・ド・オリヴェイラ
出演:ミシェル・ピコリ、ビュル・オジエ、リカルド・トレパ、レオノール・バルダック、ジュリア・ブイセル、ローレンス・フォスター、ブノワ・グルレetc

評価:80点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

Bunkamuraル・シネマにて開催中のマノエル・ド・オリヴェイラ特集で久しぶりに『夜顔』を観た。元ネタの『昼顔』も観ているはずなのだが、イマイチ覚えていないわけで新作を観るような感覚で臨んだ。これがめちゃくちゃ面白かった。

『夜顔』あらすじ

「アブラハム渓谷」「クレーヴの奥方」などで知られるポルトガルの巨匠マノエル・ド・オリベイラが監督・脚本を手がけ、ルイス・ブニュエル監督による1967年のフランス映画「昼顔」の登場人物たちの38年後を描いたドラマ。

老紳士アンリはパリのコンサート会場で、かつての親友の妻セヴリーヌと偶然にも再会を果たす。セヴリーヌはアンリから逃げるようにその場を去るが、アンリは彼女を捜し出し、真実を打ち明けるという口実で食事に誘う。

「昼顔」でアンリ役を務めたミシェル・ピコリが再び同役を演じ、カトリーヌ・ドヌーブが演じたセヴリーヌ役には「ブルジョワジーの秘かな愉しみ」「北の橋」などのビュル・オジエを起用。2025年4月開催の特集上映「オリヴェイラ2025 没後10年 マノエル・ド・オリヴェイラ特集」にてデジタルリマスター版を上映。

映画.comより引用

片思い世界~ねっとりおじVS熱い娼婦の眼差し

コンサート会場で、おじが舞台ではない方向へと眼差しを向ける。そこには女がいる。コンサートが終わるとダッシュで彼女の元へ向かおうとするのだが、人流に負けて追いつけない。あと一歩のところで、回避される《片思い世界》が繰り広げられる。

おじはバーへ入り、仲良くなったマスターに虚構のドロドロ恋愛話をするのだが、明らかに本人談であることを隠しきれていない。そんなおじに、娼婦の熱い眼差しが注がれるのだが、おじのターゲット同様、ぬるっと彼女たちの眼差しを回避し続ける。

本作はおじのストーカー行為に特化した映画ならではの気持ち悪さの美学に満ち溢れた作品であり、おじが本性を隠そうとして隠しきれない様をバーの裸婦肖像を観る/バーのマスターと話す/娼婦を無視する3つの運動で表現しているのが興味深い。

終盤のターゲットとの会話は、明らかにおじに対してダルそう塩対応している彼女に同情する。おじってねっとりしていて、話もつまらなくて気持ち悪いよねとなった。
※映画.comより画像引用