【カンヌ監督週間 in TOKIO 2024】『これが私の⼈⽣』垂れ流されるポエムにnull

これが私の⼈⽣(2024)
原題:Ma vie ma gueule
英題:This Life of Mine

監督:ソフィー・フィリエール
出演:アニエス・ジャウィ、フィリップ・カトリーヌ、ヴァレリー・ドンゼッリ、アンジェリーナ・ヴォレスetc

評価:90点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

カンヌ監督週間in Tokyoにて上映されたカイエ・デュ・シネマ映画。カイエ系の中でもいかにもおフランス会話劇との相性は最悪だが、『ショーイング・アップ』に近い辛辣で優しい世界に惹き込まれた。

『これが私の⼈⽣』あらすじ

Barbie, once an attractive, devoted mother and partner, faces newfound challenges as she turns 55, descending into darkness, violence, and absurdity while grappling with her identity, relationships, and life’s complexities.
訳:かつては魅力的で献身的な母親でありパートナーであったバービーが、55歳を迎えて新たな試練に直面し、自分のアイデンティティ、人間関係、人生の複雑さと格闘しながら、闇、暴力、不条理へと堕ちていく。

IMDbより引用

垂れ流されるポエムにnull

本作は、初老に近き中年の痛々しさを描きながらも優しく手を差し伸べる3幕構成となっている。男と別れた女はカウンセラー(監督のガチな担当医)に自分のモヤモヤを吐き出すが、彼はnullを返す。そのことを認知する彼女はより孤独を深め、詩人として脳裏に浮かぶ駄洒落を周囲に吐き散らかすが、娘ですら引き攣った顔で距離を取る。

では、誰かから関心の目を向けられたいのかというと、その相手は気にする。バスで大荷物を持った女、署名詐欺師、謎に奢ってくる男の連鎖に嫌気がさすのだ。洒落にならないぐらい滑り散らかす人生を前に彼女は壊れてしまい入院するも、看護師は一定の距離で接し親密さは生まれない。

そんな破壊的な人生の淵に対し、第三部にて救いの手が差し伸べられる。スコットランドへ自分探しの旅に出た彼女。道ゆく一期一会の人々と深入りはせずとも人としてね温もり感じる旅路となる。どこかあの世のような優しき世界だが、彼女はそれを現実として受け入れ安らぎを得る。

冷徹な現代においてフィクションができることはなにか?それは生きづらさを単語に纏めることではない。人間心理の複雑さをそのまま捉え救いの手を差し伸べることである。このカタルシスに胸を打たれた。