『Measures for a Funeral』ソフィア・ボーダノヴィッツ、継承される音楽について

Measures for a Funeral(2024)

監督:ソフィア・ボーダノヴィッツ
出演:Deragh Campbell

評価:80点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

数年前から注目しているソフィア・ボーダノヴィッツ監督が対に2時間半近い超大作『Measures for a Funeral』を放った。本作は、『Veslemøy’s Song』の続編に近い作品であり、忘れ去られたヴァイオリニストであるキャスリン・パーローの痕跡を追う内容となっている。ソフィア・ボーダノヴィッツ監督は一貫して物質的痕跡から過去を紐解き、それをフィクションとして抽象化あるいは普遍化していく監督であるのだが、『Measures for a Funeral』はその集大成ともいえる作品であった。

『Measures for a Funeral』あらすじ

Young academic pursues acclaimed early 20th-century Canadian violinist Kathleen Parlow while escaping her failed musician mother’s shadow in this poignant character study.
訳:この痛烈な人物研究では、若きアカデミックが、失敗した音楽家の母の影から逃れながら、20世紀初頭のカナダで高名なヴァイオリニスト、キャスリン・パーローを追い求める。

IMDbより引用

ソフィア・ボーダノヴィッツ、継承される音楽について

論文作成などで、様々な場所を飛び回り、過去の断片を集め物語を作る。その困難さと感動を映像に落とし込むことは難しい。しかし、ソフィア・ボーダノヴィッツ監督の手にかかれば、我々が知らない忘れ去られたヴァイオリニストであるキャスリン・パーローについて感傷を分かち合うことができる。ソフィア・ボーダノヴィッツ監督はキャスリン・パーローを追うように図書館や大学を飛び回る。そこには楽譜があったりヴァイオリンの設計図が存在する。中にはレコードに触れる機会がある。断片を解読する中で、キャスリン・パーローの人生に惹きこまれ感極まる。映画はボーダノヴィッツの分身であるオードリー・ベナックを通じて描くことで、自分事を客観的に落とし込んでいる。

終盤では20分近いコンサートシーンになるのだが、ここで強いメッセージを感じ取る。単に荘厳なコンサートを聴くよりも、キャスリン・パーローの背景を知ったうえでコンサートに触れることにより魂が揺さぶられることに。

つまり、研究者が点と点を結び付けてひとつの物語を見出す。過去を呼び覚ます儀式としてのコンサートがそれと結びつくことによって生まれる化学反応を捉えているのである。『Veslemøy’s Song』が入手できなかったので比較ができないのだが、ソフィア・ボーダノヴィッツ監督はまた一歩新しい次元へ足を踏み入れたように思える。