【ゴダール特集】『勝手にしやがれ』ゴダールは銃を誤魔化す

勝手にしやがれ(1960)
A bout de souffle

監督:ジャン=リュック・ゴダール
出演:ジャン=ポール・ベルモンド、ジーン・セバーグ、ダニエル・ブーランジェ、アンリ=ジャック・ユエetc

評価:40点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

2月からずっとジャン=リュック・ゴダールの作品を追っているのだが、原点に戻って『勝手にしやがれ』を観ることにした。中学生の時に観ているのだが、よくわからない印象があった。今回、観直してみるとゴダールのクセが掴めたような気がした。

『勝手にしやがれ』あらすじ

ジャン=リュック・ゴダールの初長編監督作。即興演出や手持ちカメラでの街頭撮影など、当時の劇場映画の概念を打ち破る技法で製作され、後の映画界に大きな影響を与えた、ヌーベルバーグの記念碑的作品。原案はフランソワ・トリュフォー、テクニカルアドバイザーとしてクロード・シャブロルも参加している。警官を殺してパリに逃げてきた自動車泥棒のミシェルは、新聞売りのアメリカ留学生パトリシアとの自由な関係を楽しんでいた。パトリシアはミシェルの愛を確かめるために、彼の居場所を警察に伝え、そのことをミシェルにも教えるが……。2016年にデジタルリマスター&寺尾次郎氏による新訳版が公開。2022年には、公開60周年を記念してつくられた4Kレストア版で公開。

映画.comより引用

ゴダールは銃を誤魔化す

今回、観て驚いたのは、『鵞鳥湖の夜』がほとんど『勝手にしやがれ』の構図と一緒だということだ。警察を殺して都市部に逃げてきた者の愛と追う/追われるの関係といった構図が奇妙なところで結びついて感動すら覚えた。と同時にゴダールのクセと問題点も浮き彫りになる。詰まるところ、小手先の技術で誤魔化し続ける作品だというところだ。ジャンプカットはもちろん、なんといっても銃アクションの誤魔化しが顕著である。男の運動でもって「撃たれた」を表現しており、遠巻きに撮影することで血糊を塗るといった面倒な演出を回避している。この技法は、後のゴダール映画の中でも頻出のものとなっており、『カラビニエ』における銃殺を横移動によって誤魔化す手法や、『はなればなれに』における銃を撃っても死なない描写に反映されている。ゴダール自身、「映画」が撮れないといったコンプレックスと長年向き合ってきたといえ、その結果、全ての芸術は何かの引用であることを剥き出しにすることによって唯一無二の作家性を勝ち取ったといえる。とはいえ、『鵞鳥湖の夜』を踏まえるとあまりにもアクションやサスペンスを撮ることから逃げているし、その小手先の逃げが評価されているのは過大としか思えない。一方で、その過大評価があったからこそゴダールは『ジャン=リュック・ゴダール 遺言 奇妙な戦争』を生み出すまで活動できたともいえる。なのでどちらにせよ記念碑的作品であることは間違いない。

※映画.comより画像引用