ロボット・ドリームズ(2023)
Robot Dreams
監督:パブロ・ベルヘル
評価:90点
おはようございます、チェ。ブンブンです。
昨年の東京国際映画祭で上映され、第96回アカデミー賞長編アニメーション賞にもノミネートされたアニメ作品。監督は傑作『ブランカニエベス』のパブロ・ベルヘルとはいえ、絵柄が子どもの絵本っぽすぎて油断していた。確かに、本作は親が子どもに映画体験を提供する用の作品といった感じで、随所に映画史に添った技法が使われている。映画ファンが観ると、オマージュに溢れた作品となるわけだが、『ロボット・ドリームズ』の場合、単なるオマージュに溺れることなく映画演出の応用を通じたアニメとしての表現の探究、そしてあまりに切なく驚くべき展開によって観る者を圧倒する作品であった。日本公開は2024/11/8(金)と映画祭シーズンど真ん中ではあるが、下半期最重要作品であった。
『ロボット・ドリームズ』あらすじ
「ブランカニエベス」で知られるスペインのパブロ・ベルヘル監督が初めて手がけた長編アニメーション映画。アメリカの作家サラ・バロンによる同名グラフィックノベルを原作に、擬人化された動物たちが暮らす1980年代ニューヨークで犬とロボットが織りなす友情を、セリフやナレーションなしで描く。
ニューヨーク、マンハッタン。深い孤独を抱えるドッグは自分の友人にするためにロボットを作り、友情を深めていく。夏になるとドッグとロボットは海水浴へ出かけるが、ロボットが錆びついて動けなくなってしまう。どうにかロボットを修理しようとするドッグだったが、海水浴場はロボットを置いたままシーズンオフで閉鎖され、2人は離ればなれになってしまう。
2024年・第96回アカデミー賞で長編アニメーション賞にノミネート。
子どものための映画表現入門
正直、本作はあまり調べないで観た方が良いだろう。中身については軽くだけ語っておく。『ヨーヨー』のポスターが飾ってあり、Magnavox Odyssey 2をひとりで嗜む犬の孤独を表現するところから物語は始まる。通販で、ロボットを購入する犬。ドジっ子ロボットとの小粋な掛け合いが描かれるわけだが、ある日ビーチで遊んでいたら、バッテリー切れでロボットが立てなくなってしまう。夜も更け、担いで家に帰ることもできず、翌日になんとかしようとするのだが、こともあろうことかビーチはしばらく閉鎖となってしまう。果たして犬とロボットは再会することができるのだろうかといった内容となっている。
映画は、犬とロボットが互いに意識することで生まれる夢、そして現実が交差して描かれる。そこで様々な映画の技法が使われる。当然ながらとバークレーショットも挿入されるわけだが、単に万華鏡のようなマスゲームをやって終わりにすることはない。バズビー・バークレーが『泥酔夢』で行った、円陣の中心からオブジェクトがカメラに向かって飛んでくるレベルで引用してくるのだ。バークレーの魅力を120%伝えようとする気概に熱くなる。もちろん、アニメとしての表現も冴え渡っており、雪だるまが自分の顔を使ってストライクをする。犬がボールを投げるもギリギリのところで1ピンも倒れない宙吊りが形成されるといった、劇映画だと表現の難しい荒唐無稽を惜しみなく注ぎ込んでいる。
とにかくサイコーに楽しくホロりと切ない大傑作であった。
※映画.comより画像引用