『Last Embrace』ジョナサン・デミのヒッチコック映画

Last Embrace(1979)

監督:ジョナサン・デミ
出演:ロイ・シャイダー、ジャネット・マーゴリン、ジョン・グローヴァー

評価:70点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

たまに巨匠クラスの作家であっても日本未公開映画がある。有名なところでいえばジョナサン・デミ『Last Embrace』だろう。作曲家が『白い恐怖』のロージャ・ミクローシュであり、『北北西に進路を取れ』や『めまい』のオマージュで彩った本格的ヒッチコックサスペンスなのだが、批評家評判が芳しくなかったらしく未だに日本に紹介されていない作品である。最近4K版ブルーレイが出たらしく、観てみた。そこまで悪くはなかった。

『Last Embrace』あらすじ

Harry breaks down and loses his job after his wife is assassinated – could it be his turn next ?
訳:妻を暗殺され、失意のどん底に突き落とされたハリー。

IMDbより引用

ジョナサン・デミのヒッチコック映画

捜査官の男ハリーは妻とレストランで食事をしていたところ、襲撃に遭い彼女を失ってしまう。退院後、彼は刺客に突き落とされそうになる。ひょっとして捜査機関の陰謀なのではないかと疑い始める。そんな中、彼はエリーという学生と出会い、ヘブライ語のメモを渡される。

ヒッチコック特有の追う/追われるの関係を前面に押し出した作品となっており、螺旋階段での銃撃戦やナイアガラの滝での追いかけっこはヒッチコックファンにとってはたまらないものがある。

ただ、ヒッチコック映画で観られないような面白い演出が多いのも特徴的となっている。たとえば、ハリーが列車に轢かれそうになる場面。落ちると見せかけて、慣性の法則で回転しながら刺客を捉える場面は、滑稽ながらもユニークな演出であろう。また、ナイアガラでのチェイスシーンでは群れを巧みに使っており、満員のエレベーター空間でハリーとターゲットは同じ空間にいながら手出しできない場面の魅せ方はジョナサン・デミ匠の業を感じるものとなった。