『マグダレーナ・ヴィラガ』ニナ・メンケス流「ジャンヌ・ディエルマン」

マグダレーナ・ヴィラガ(1986)
Magdalena Viraga

監督:ニナ・メンケス
出演:ティンカ・メンケス、クレア・アギラール、Dave Gist、Scott Edmund Lane etc

評価:70点


おはようございます、チェ・ブンブンです。

明日5/10(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷ほかにて公開となる特集上映「ニナ・メンケスの世界」。唯一観ていなかった『マグダレーナ・ヴィラガ』を観た。ニナ・メンケス監督は、クライテリオンにて好きな映画10本を挙げているのだが、その中に『ジャンヌ・ディエルマン ブリュッセル1080、コメルス河畔通り23番地』がある。『クイーン・オブ・ダイヤモンド』でも『ジャンヌ・ディエルマン』のような空気感が漂っていたが、本作はより『ジャンヌ・ディエルマン』に近づいた作品であった。

【ニナ・メンケス監督の好きな作品】
1.アンドレイ・ルブリョフ
2.裁かるゝジャンヌ
3.冬の旅
4.甘い生活
5.WANDA/ワンダ
6.バルタザールどこへ行く
7.ジャンヌ・ディエルマン
8.処女
9.沼地という名の町
10.こわれゆく女

『マグダレーナ・ヴィラガ』あらすじ

女性が対峙する内面世界や孤独・暴力といったテーマを独自の美学で描き続けるアメリカの女性監督ニナ・メンケスが、1986年に発表した長編デビュー作。

殺人の容疑をかけられて逮捕された娼婦アイダを主人公に、孤独な女性が生きる残酷な現実世界と内なる心の世界を、時系列を曖昧にしながら詩的な映像で描き出す。メンケス監督の妹ティンカ・メンケスが主演を務めた。

第12回ロサンゼルス映画批評家協会賞にて「年間最優秀インディペンデント/実験映画賞」を受賞。アルベロス・フィルムとアカデミー・フィルム・アーカイブによって修復され、2024年5月開催の特集上映企画「ニナ・メンケスの世界」にて日本初公開。

映画.comより引用

ニナ・メンケス流「ジャンヌ・ディエルマン」

刑務所に入れられた娼婦ことアイダ、またはマグダレーナ・ヴィラガの経緯を時系列入れ替えながら描いていく。娼婦時代の彼女は、精気を失ったかのように生活しており、まるで「娼婦」という監獄に閉じ込められているかのようだ。セックスする時も、セックスドールのように振る舞っている。そんな彼女は娼婦仲間と対話するのだが、『仮面/ペルソナ』のように動なる存在と静なる存在に分かれ、内なる他者として対話を重ねていくのだ。本作は『ジャンヌ・ディエルマン』における売春の部分にフォーカスを当て、男によって性的に消費されてしまう女性の抑圧された生活を暴き出している。『ブレインウォッシュ セックス-カメラ-パワー』で提示された男の眼差しはここでも提示されており、女性を斜めから見下すようないやらしいショットで男の醜悪さを捉えているのである。ニナ・メンケス監督が今、日本で紹介されることに強い意義を感じたのであった。