『ツイスターズ』まさかのYouTuber論映画だった件

ツイスターズ(2024)
Twisters

監督:リー・アイザック・チョン
出演:デイジー・エドガー・ジョーンズ、グレン・パウエル、アンソニー・ラモスetc

評価:80点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

懐かしの午後ロー映画『ツイスター』が唐突にリメイクされた。しかも監督が『ミナリ』のリー・アイザック・チョンである。どうやら時代に併せてインフルエンサーが竜巻を追う内容になっているとのころ。てっきり、よくあるインフルエンサーを悪として扱い、惨事のコマとして消費した作品なのかと思ったら違った。YouTuber論の映画に仕上がっており、映画業界が小バカにしてきたYouTuberに歩み寄ることで本来のあるべきアメリカ像を提示する内容だったのだ。以下、レビューしていく。

『ツイスターズ』あらすじ

超巨大竜巻が多数発生したオクラホマを舞台に、知識も性格もバラバラな寄せ集めチームが竜巻に立ち向かう姿を描いたアクションアドベンチャー。

ニューヨークで自然災害を予測して被害を防ぐ仕事をしている気象学の天才ケイトは、故郷オクラホマで史上最大規模の巨大竜巻が連続発生していることを知る。彼女は竜巻に関して悲しい過去を抱えていたが、学生時代の友人ハビから必死に頼まれ、竜巻への対策のため故郷へ戻ることに。ケイトはハビや新たに出会ったストームチェイサー兼映像クリエイターのタイラーらとともに、前代未聞の計画で巨大竜巻に挑む。

「ザリガニの鳴くところ」のデイジー・エドガー=ジョーンズが気象学の天才ケイト、「トップガン マーヴェリック」のグレン・パウエルがストームチェイサーのタイラー、「トランスフォーマー ビースト覚醒」のアンソニー・ラモスがケイトの友人ハビを演じた。「ミナリ」のリー・アイザック・チョン監督がメガホンをとり、「レヴェナント 蘇えりし者」のマーク・L・スミスが脚本を担当。

映画.comより引用

まさかのYouTuber論映画だった件

気象学者のケイトは、竜巻を消滅させるための実験を行う中で仲間を失い現場から離れた。モニタとにらめっこしながら気象情報を分析している彼女に再び現場仕事の依頼が来る。新しい手法で、竜巻の3Dデータを採取する現場検証だった。渋々参加することになったケイトの前に、取材ツアー中の竜巻系YouTuber軍団が乗り込む。彼らは、ケイトたちをライバル視し、どちらが竜巻を捉えられるか煽る形で勝負してくる。

こう聞くと、YouTuber集団がひとりずつ竜巻の餌食になることを期待するのだが、映画はその方向に倒さないのだ。プロフェッショナルとしての彼らを映し出す。確かに彼らは危険な行為をする。同業者と見なしたらライバルとして立ち回るので、「画面の前の君たちは真似すんなよ」と言っているのは形式的に思える。しかしながら、いざ竜巻で町が壊滅すると、竜巻を撮る欲望をOFFにして人命救助に専念するのだ。ここで興味深い観点が生まれてくる。被災地を軸に、学者サイドはビジネスとして被災地を食い物にしようとしている。一方で、YouTuber集団は炎上しないため、撮影を円滑に進めるための立ち回りではあるが率先してチャリティ活動を行い、ライバルであるケイトにも手を差し伸べるのだ。

そして、事態が大きくなるにつれ、学者サイドとYouTuber集団が協力し合うようになる。ここで重要なのは、学者はYouTuber集団の真面目さを知り、YouTuber集団は学がないことを開き直り学者をバカにする反知性主義に走らないところである。アメリカは今や対話不能にまで分断されている中、背景の異なる者が共通する対象を軸に手を取り問題解決をしていく。あるべき姿を捉えているように思える。

シビル・ウォー』では、分断するアメリカの中で「他者を撮る」ことによって心を失っていく人の話であった。一方、こちらは「手を取る」を選択することで平和をもたらそうとする者の話であった。実に面白い観点点である。

映像に関していえば、正直クローズアップが多すぎて観辛いのだが、終盤で映画館のスクリーンが吹き飛び、虚構から現実に投げ出される場面が『マチネー/土曜の午後はキッスで始まる』さながらの迫力があって良かった。

※映画.comより画像引用