それいけ!アンパンマン いのちの星のドーリィ(2006)
監督:矢野博之
評価:80点
おはようございます、チェ・ブンブンです。
アンパンマンフルマラソン、ついにガチ勢の間で評判の高い名作『それいけ!アンパンマン いのちの星のドーリィ』にたどり着いた。これはシリーズの中でも屈指のシリアス回といえる一本であった。
『それいけ!アンパンマン いのちの星のドーリィ』あらすじ
やなせたかし原作のテレビアニメ「それいけ!アンパンマン」の劇場版第18作。ゲスト声優に安達裕美を迎える。いのちの星から、アンパンマンのように命を与えられた人形ドーリィ。自由に動けるようになって大喜びの彼女は、自分勝手な行動で周囲の皆を困らせる。そんな中、バイキンマンが作った新型ロボット、スーパーカビダンダンが町を襲い始める。闘いの末、カビだらけになって倒れたアンパンマンの姿を見たドーリィは……。
何のために生まれてくるのか
人形がアンパンマンワールドに堕ちる。そこへ星のエネルギーが注ぎこまれドーリィが生まれる。彼女は学校に通うことになるのだが、歌の授業で「何のために生まれてくるのか」という歌詞に突っかかる。「自分のために決まっているでしょ。与えられた命楽しまなきゃ。」と自由を謳歌するのだが、その協調性のなさから煙たがられ孤立してしまう。そんな中、ばいきんまんが開発したスーパーカビダンダンが街を襲撃する。
今回のボススーパーカビダンダンはアンパンマン最強キャラランキングの中でも上位に入るほどの強敵。的確にアンパンマンサイドの行動を封じ込めてくる厄介さがある。村人、そしてアンパンマンサイドをカビの竜巻に巻き込み、固定化させる。アンパンマンに業火のカビファイアを浴びせ、内なる勇気ごと蒸発させてしまう。この状態ではいくら、アンパンマン号が無事で新しいパンを投げつけようとも交換ができなくなる。絶望的な状態だ。この極限状況でドーリィは自己犠牲の精神を知る。
アンパンマンの世界では自己犠牲が物語のキーとなることが多い。「何のために生まれて」の答えとして他者を守るためが存在し、それを果たすために自己犠牲が行われるのだが、これは戦争を生き抜いたやなせたかしならではの世界観だといえる。特攻も当然ながら知っており、他者を守る行為が「生きてしまった」悲しみへと繋がることも分かっている。そんな思い感情が本作に注ぎ込まれているようで、強烈な一本に感じた。