『化け猫あんずちゃん』モラトリアム人情劇からアクションファンタジーへ

化け猫あんずちゃん(2024)

監督:久野遥子、山下敦弘
出演:森山未來、五藤希愛、青木崇高、市川実和子etc

評価:85点


おはようございます、チェ・ブンブンです。

2024年はチャレンジングなアニメ作品が多数公開されている。今年の夏は『化け猫あんずちゃん』が凄いと噂で聞いた。

『映画クレヨンしんちゃん』シリーズの絵コンテを担当した久野遥子が山下敦弘の撮った画をロトスコープに掛ける。脚本は『れいこいるか』のいまおかしんじ。あまりにも情報量の多い異色さを持った本作。確かに山下敦弘×いまおかしんじの組み合わせは意外ながらシナジーを感じられるものがあるが、ゆるっとした雰囲気だけで90分駆け抜けられるのか?こうした一抹の不安は杞憂に終わった。本作はロトスコープである意味を感じさせる作品に仕上がっていたのだ。

『化け猫あんずちゃん』あらすじ

「カラオケ行こ!」「1秒先の彼」の山下敦弘監督とアニメーション作家の久野遥子監督がタッグを組み、いましろたかしの同名コミックを日仏合作で映画化し、アヌシー国際アニメーション映画祭の長編コンペティション部門に出品された長編アニメーション。

ある豪雨の日、寺の住職が段ボール箱の中で鳴いている子猫を見つける。その猫は「あんず」と名付けられて大切に育てられるが、奇妙なことに20年が過ぎても死ぬことはなく、30年経った頃には人間の言葉を話して人間のように暮らす化け猫となっていた。現在37歳のあんずちゃんは、原付バイクに乗って移動し、マッサージ師のアルバイトをしている。ある日、親子ゲンカしたまま行方がわからなくなっていた住職の息子が、11歳の娘かりんを連れて寺に帰ってくる。かりんの世話を頼まれたあんずちゃんは、仕方なく面倒を見ることになるが……。

森山未來が主人公あんずちゃんの声と動きを演じ、山下監督を中心とする実写班が撮影した映像と音声をもとに、久野監督を中心とするスタッフ陣が動きや表情を抽出してアニメーション化する「ロトスコープ」の手法で描いた。老舗スタジオ・シンエイ動画とフランスの気鋭スタジオ・Miyu Productionsがアニメーション制作を担当。

映画.comより引用

モラトリアム人情劇からアクションファンタジーへ

11歳の娘かりんが寺に預けられる。父はサラ金に追われており、金策のため東京へ戻り東奔西走している。そんな彼女は目撃する。猫が話しているのだ。化け猫あんずちゃんは37歳のフリーター。だらしがない姿にかりんはモヤモヤを抱える。

本作は前半と後半で大きくジャンルが異なる。前半は山下敦弘特有のゆるさ、特に『もらとりあむタマ子』に近いものがある。そこに『れいこいるか』のような苦み、生々しい翳りが挿入される。

ただ、映画が進むごとに霊的存在、異界が増えていきファンタジーの要素が強まっていく。そして中盤以降は地獄めぐり、そしてアクションへと発展していく。日本映画の場合、この手のファンタジー要素は学芸会レベルのコスプレショーになってしまう。特に山下敦弘監督となると、そのコスプレ感を前面に出して映画化してしまうだろう。ただ、アニメになったことでこの手の貧乏臭さや茶番感は消臭されることになる。実写的人間ドラマからアニメ的ドラマへのシフトとしてロトスコープが効果的に使われているといえる。

確かに、化け猫あんずちゃんが貧乏神と対話する場面。人間には貧乏神が見えていないことを示すカット割り、濱口竜介『天国はまだ遠い』のようにリッチな画で魅せることもできるが、日本映画界においてそれを実装するには難易度が高すぎる気がする。アニメだからこそ、違和感なく霊的存在を表現できたといえよう。

地獄から鬼が現世にやってきてしまう展開の修羅場修羅場のつるべうち、それをユーモラスに表現して魅せる演出こみで映画を観たなと感じた。
※映画.comより画像引用