憐れみの3章(2024)
Kinds of Kindness
監督:ヨルゴス・ランティモス
出演:エマ・ストーン、ジェシー・プレモンス、ウィレム・デフォー、マーガレット・クアリー、ホン・チャウ、ジョー・アルウィン、マムドゥ・アチーetc
評価:60点
おはようございます、チェ・ブンブンです。
日本公開は2024/9/27(金)の第77回カンヌ国際映画祭にて男優賞(ジェシー・プレモンス)を受賞したヨルゴス・ランティモス監督最新作『憐れみの3章』を試写にて一足早く観させていただいたのでレビューを書いていく。
『憐れみの3章』あらすじ
自分の人生を取り戻そうと格闘する、選択肢を奪われた男、海難事故で失踪した妻が、帰還後別人になっていた夫、卓越した宗教指導者になるべく運命付けられた特別な人物を懸命に探す女……という3つの奇想天外な物語。
囚われの3章
本作は3章に分かれており、いずれもヨルゴス・ランティモスが得意とする人間心理や社会の箱としての内と外を扱っており、それぞれの話の一部ディテールが交錯するホン・サンスに近いことを行っている。例えば、第一部にて妻を中絶させるため、毒を盛る場面は回想として白黒で描かれているのだが、第三部では実際の過程として睡眠薬を入れたウイスキーでエマ・ストーン演じる女を眠らせレイプする様子が描かれている。少しずつ継承しながら全く異なる3つの話をひとつの世界としてまとめるような演出となっている。さて、この3つの話はどれも強烈である。
第1章「R.M.Fの死」は、車で追突させる仕事を命じられたロバートがそれを断ると妻が行方不明となる話である。雇い主レイモンドに支配されていたロバートが、彼からの脱却を行おうとするも、逃げられないフィルム・ノワール的な内容となっている。ここではランティモスの特徴である家の内外がモチーフとして使われており、外に出ようとしても出られない様が捉えられている。
第2章「R.M.Fのは飛ぶ」では、妻が行方不明となり情緒不安定となる警察官の前に彼女が現れるのだが、別人ではと疑う内容だ。第1章では内から外へ出ようとし主体が内へと引き戻される話だったのだが、こちらは内に入ってくる異物をコントロールし追い出すことで外から欲する存在を招き入れようとしている。
第3章「R.M.Fのはサンドイッチを食べる」は、新興宗教(?)の女がレイプされたことで組織から追い出される話となっている。これは、内に留まろうとするも外に投げ出された者がどのように自己の在りどころを見つけていくかを描いている。
ヨルゴス・ランティモスとしては、強烈な描写目白押しであり、犬はあまり無事ではなく、指切り、セックス、そして嘔吐が押し寄せてくる3本といえよう。
日本公開は2024/9/27(金)。