【シャンタル・アケルマン特集】『向こう側から』メキシコ人の心象ポートレート

向こう側から(2002)
De l’autre côté

監督:シャンタル・アケルマン

評価:50点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

日仏学院のシャンタル・アケルマン特集でカイエ・デュ・シネマベストに選出された『向こう側から』が上映された。てっきり、昔に日仏学院とかアテネ・フランセで上映されているのかなと思ったら、日本初上映らしい。実際に観てみると、アケルマンらしいドキュメンタリーであった。

『向こう側から』概要

A documentary look at the fate of Mexicans who cross the border into the United States.
訳:国境を越えてアメリカに入国するメキシコ人の運命を追ったドキュメンタリー。

IMDbより引用

メキシコ人の心象ポートレート

本作は9.11アメリカ同時多発テロ後のメキシコ移民の越境を中心に、家族と離れ離れになったメキシコ人や国境警備にあたるアメリカ人をインタビューしていく作品だ。

最大の特徴はインタビューパートとは別に、長回しで国境と思われる壁や、検問に至るまでの道路を長回しで捉え続けるショットが頻繁に挿入されることにある。『ジャンヌ・ディエルマン ブリュッセル1080、コメルス河畔通り23番地』において抑圧される主婦の肖像を撮ったシャンタル・アケルマン。映画でありながら写真集のような風格を持ち、一場面の画がそのまま主婦の肖像へと還元されていく作品に仕上がっていた。

この手法が『向こう側から』でも応用されており、外的な差別や内的な孤独を前に葛藤するメキシコ人の心理を、土埃が舞うひりついた大地に代弁させていた。

ただ、アメリカとメキシコの国境問題を巡るポートレートとしては取っ散らかっている印象が強く、ただ撮れたものを置いているだけのような気がしてしまった。

『向こう側から』上映前に『南』を観た人たちがざわつきながら出てきた。おそらく、あたりは『南』なんだろう。急に、興味が出てきたのであった。