『水の中で』ホン・サンスのちょっとピンボケ

水の中で(2023)
In Water

監督:ホン・サンス
出演:シン・ソクホ、ハ・ソングク、キム・スンユン、キム・ミニetc

評価:60点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

ホン・サンスが手掛けたピンボケ映画をようやく観た。

『水の中で』あらすじ

1年に2作品という驚異的なペースで作品を量産しつつも、作品毎に常に新しい試みや語りの手法を実践しているホン・サンス監督。しかし今作で彼が行った「全編ピンボケ」という実験には誰もが驚かされたし、実際のところ、多くの観客の困惑を誘ったともいえるかもしれない。また、この実験によって失われてしまうものがあることも確かだろう。第一に、観客の目が慣れるまでに多少の時間が必要になるし、また彼が元々クローズアップを多用する監督ではないにせよ、俳優たちの微細な表情の変化が全く追えなくなってしまうのだから。しかしながら、俳優として活動してきた青年が演出家として2人の仲間と共に短編映画を作ろうとする姿を描いたこの作品は、物語の構造がよりシンプルになっていることも功を奏しているのか、結果として、詩的で親密で、心を打つ作品に仕上がっている。監督自らが手掛けた、アナログテープに録音されたようなくぐもった音楽も効果的だ。

※東京フィルメックスより引用

ホン・サンスのちょっとピンボケ

本作は映画の撮影をうだうだやる様子をピンボケを交えながら描いた作品だ。まるで我々がモラトリアムな青春を思い出すかのような空気感を再現しているように思える。ただ、想像していたよりかはピンボケをしていないシーンが多く「全編ピンボケ」といった訳ではない。恐らく、我々が回想するときに、明確に思い出せる部分と思い出せない部分の差を演出しているのであろう。ただ、そうであれば、なぜ飲み会の場面の方が明瞭なのだろうか?実際に撮影している時よりも、飲みながらダラダラと話している記憶の方が鮮明に残りやすいといったホン・サンスの思想なのだろうか?

どうもいまいち法則性が分からず、上手くいっているようないっていないような曖昧さの中にある作品のように感じた。