【MUBI】『YANNICK』カンタン・デュピューの不条理演劇

YANNICK(2023)

監督:カンタン・デュピュー
出演:ラファエル・クナール、ピオ・マルマイ、ブランシュ・ガールディン、セバスチャン・シャサーニュetc

評価:50点


おはようございます、チェ・ブンブンです。

日本版MUBIにまさかのカンタン・デュピュー新作『YANNICK』が来ていた。カンタン・デュピューといえば『ラバー』や『ディアスキン』など奇天烈映画のイメージが強いが、本作は『勤務につけ!』における『ブルジョワジーの秘かな愉しみ』オマージュから発展させたような作品だ。つまり、不条理茶番劇をメタ的に描いた作品だ。いつも通り60分ぐらいと短めなのでサクッと観てみた。

『YANNICK』あらすじ

In the middle of a performance of the play “Le Cocu”, a very bad boulevard comedy, Yannick gets up and interrupts the show to take the evening back in hand.
訳:大通りで上演されているコメディ『ル・コクー』の上演中、ヤニックは立ち上がってショーを中断し、夕べを取り戻そうとする。

IMDbより引用

カンタン・デュピューの不条理演劇

演劇の講演中、ひとりの男が立ち上がり「なんてクソな芝居だ」と語り始める。「そんなに嫌なら出ていけば」というも、うだうだ愚痴を溢す。そして45分と15分かけてこの会場に来たことなどしょうもないことを並べ始める。なんとか、追い出すことに成功するも、今度は銃を持ってきて脅し始める。そして、客席からPCを借りて傑作に書き換えようとする。

演劇における舞台上と客席との暗黙の境界線を破壊することによる緊迫感を60分間持続させた作品。ヤンニックからは小物感が漂っており、舞台上で銃とタバコを片手にクソな芝居を傑作にしようとタイピングを始めるのだが、あまりにもタイピング速度が遅くて苦い笑いが出る。要は、観客がクソだと演劇を酷評しても、当の本人が傑作に書き換えられるのかといったら否だということを皮肉っている作品といえる。

それにしても本作が興味深いのは、これが日本人なら分かるのだが、フランス人があのような場でじっとしていられるのかといった問題だ。ヤンニックが銃を持っているにしても、脇があまりにも甘いので警察を呼んだり撃退するといったことが行われそうなのだが、観客はジッと彼の茶番に付き合っているのである。

いつも以上に茶番が強いのと、あまりにシンプルな作りなので面白いかと言われたら微妙だが、67分と短めなのでダメージは少ない作品といえよう。

※MUBIより画像引用