プリシラ(2023)
Priscilla
監督:ソフィア・コッポラ
出演:ケイリー・スピーニー、ジェイコブ・エロルディ、ダグマーラ・ドミンスク、カミラ・コワルetc
評価:65点
おはようございます、チェ・ブンブンです。
ソフィア・コッポラ新作『プリシラ』を観た。本作はエルヴィス・プレスリーの元妻であるプリシラの心情に歩み寄った作品となっている作品だ。単なる伝記ものに留まらず、普遍的な妻像を告発した内容になっていた。
『プリシラ』あらすじ
「ロスト・イン・トランスレーション」「マリー・アントワネット」のソフィア・コッポラ監督が、エルビス・プレスリーの元妻プリシラが1985年に発表した回想録「私のエルヴィス」をもとに、世界的スターと恋に落ちた少女の波乱の日々を描いたドラマ。
14歳の少女プリシラはスーパースターのエルビス・プレスリーと出会い、恋に落ちる。やがて彼女は両親の反対を押し切って、大邸宅でエルビスと一緒に暮らし始める。これまで経験したことのない華やかで魅惑的な世界に足を踏み入れたプリシラにとって、彼のそばでともに過ごし彼の色に染まることが全てだったが……。
「パシフィック・リム アップライジング」のケイリー・スピーニーが主人公プリシラの心の変遷と外見の変化を繊細に演じ、2023年・第80回ベネチア国際映画祭で最優秀女優賞を受賞。「Saltburn」「キスから始まるものがたり」のジェイコブ・エロルディがエルビスを演じた。フランス出身のロックバンド「フェニックス」が音楽を手がけ、美しく精巧な美術とともに1960~70年代の空気を再現。
スターのドール人形として……
ソフィア・コッポラは奥なる存在として押し込められるプリシラ像を空間による分断を通じて描く。それは身長差という埋まることのない差を通じた、スター/非スターの境界線に始まり、テレビの内/外、そして群衆によって持ち上げられる様と埋もれていく様といったアプローチでグロテスクに浮き彫りとなっていく。それだけならまだしも、プリシラはまるでスターのドール人形のように扱われる。着せ替え人形のように、服を変える。スターの遊び道具としてしか機能していないが、プリシラは憧れで好きな存在であるプレスリーにしがみつこうと服を変え、束の間の肉体関係へと持ち込むのである。
演出としては堅実ながらも、この手の映画としては既に『SWALLOW』や『チャイコフスキーの妻』といった先例が近年作られており、そちらの演出の方が鋭利なため、いつものソフィア・コッポラ映画。つまりは美しい映画に留まってしまったところが難点だったといえよう。悪くはないが、特段良かったかと訊かれたら微妙なところである。
※映画.comより画像引用