『シャンバラ/Shambhala』心象世界はセピア色

シャンバラ(2024)
Shambhala

監督:ミン・バハドゥル・バム
出演:シンリー・ラモ、ソナム・トップデン、Tenzing Dalha、カルマ・ワンギャル・グルンetc

評価:70点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

第74回ベルリン国際映画祭コンペティション部門に初めてネパール映画が選出された。監督のミン・バハドゥル・バムは日本でも東京フィルメックスで紹介されており、『黒い雌鶏』以降久しぶりの作品である。彼の立ち位置は、チベット映画界の重鎮ペマ・ツェテンと似ており、ネパールインディペンデント映画組合の会長を務めるほか、映画プロダクションShooney Filmsを立ち上げて、後継の映画人を育成しているとのこと。そんな彼の新作『Shambhala』を観た。タイトルはチベットの伝説上の場所であり、いうならば桃源郷といった場所だ。

『Shambhala』あらすじ

In a Himalayan polyandrous village, pregnant PEMA faces scrutiny as her husband vanishes. With her monk brother-in-law, her de facto spouse, she seeks him in the wild, unraveling her own self-discovery along the journey
訳:ヒマラヤの一夫多妻制の村で、妊娠中のペマは夫が失踪し、監視の目にさらされる。事実上の伴侶である義弟の僧侶とともに、彼女は野生の彼を探し求め、その旅の中で自分自身を発見していく。

IMDbより引用

心象世界はセピア色

カザフスタン映画『ハーモニー・レッスン』の撮影を手がけたアジズ・ジャンバキエフの手によるゆったりとしたズームがネパール山村に流れる雄大な時を捉えていく。本作は150分あり、内容自体は90分ぐらいのものだが、スローシネマとしてのペースでありのままの大地を捉えていくのである。そのため、タイトルが出るまで47分も要する。

主人公ペマは、夫のタシが交易の旅に出ている最中に妊娠をする。不倫を疑われる中、彼は失踪してしまう。そこで僧侶のカルマと彼を探す旅に出るというもの。荘厳な雰囲気の中、展開される儀式は抑圧される女性を浮き彫りにする。対して旅に出ると、開放感溢れる景色が広がっているが、山の麓という谷の構図が、彼女の出られない運命を象徴しているように思える。

さて、本作は回想シーンのような場面でセピア色に変わる。これを観てペマ・ツェテンっぽいなと感じた。ペマ・ツェテンは『轢き殺された羊』でセピア色の心象世界を描いていたが、ミン・バハドゥル・バム監督も同様の手口を使っていた。

岩波ホールがない今、日本公開は難しいと思うが、東京フィルメックスあたりで上映されそうな作品といえよう。