『マイルストーンズ』政治の時代の終焉の先にある再生

マイルストーンズ(1975)
MILESTONES

監督:ロバート・クレイマー、ジョン・ダグラス

評価:60点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

ロバート・クレイマー映画を観たくなってDVD-BOXを買った。今回観た『マイルストーンズ』は一見、ドキュメンタリー映画に見えるが、実は特殊な過程で作られた劇映画である。一冊のファイルを半年以上保管し、そこに描きたい要素を集めていく。その後、50ページ分を小包にして相方のジョン・ダグラスに渡し整理する。そこから数ヶ月放置した後に議論を行い脚本を練り上げたとのこと。

実際に観てみると散文的でありながらも緻密に編み込まれた政治の時代の終焉を目撃することとなった。

『マイルストーンズ』あらすじ

1960年代に設立された映像による左翼前衛闘争集団「ニューズリール」の中心的人物として知られ、社会の本質を鋭くあぶり出す作品を数多く手がけてきた映画作家ロバート・クレイマーが、アメリカの左翼ラディカルの生き残りたちの「その後」にスポットを当て、時代の変化に直面した彼らが新たな生き方を模索する姿を描いた作品。50人以上にもおよぶ登場人物たちが織り成す6つのドラマが、互いに交錯しながら複雑に絡みあっていく。2013年、特集上映「アメリカを撃つ 孤高の映画作家ロバート・クレイマー」にて、オリジナル16ミリフィルムで日本劇場初公開。17年に「ルート1/USA」を加えて行われた同特集で再公開。

映画.comより引用

政治の時代の終焉の先にある再生

60年代の政治の時代が終焉を迎える。あるものは逮捕され、出所すると変わり果てた世界に困惑する。別のある者は、60年代は何かと反芻しながら実存の危機と対峙する。3時間以上にかけて暗い自問自答の旅が描かれる。今のようにインターネットで仲間が見つかるような時代ではない。あの頃の熱気を失った時代に、燃え尽きてしまった人たちはモラトリアムな空気感の中で仕事を探したり、ろくろを回したりしながら前へと進む。対話を行なっても互いにモヤモヤしており、言語化もできない。次なる革命の準備期間なのか?それとも永遠に「あの頃」は戻ってこないのかと不安になりながら歩き続ける。映画はクライマックスにかけて出産のシーンを描く。これが感動的である。それは当時の人と同じぐらいのひりついた時間を共有した我々があの出産をもって希望を見出すからであろう。散文によって紡がれる骨太なロードムービーであった。