ジュラシック・ワールド 炎の王国(2018)
Jurassic World: Fallen Kingdom
監督:J・A・バヨナ
出演:クリス・プラット、ブライス・ダラス・ハワード、ジェフ・ゴールドブラム、B・D・ウォンetc
評価:50点
おはようございます、チェ・ブンブンです。
2024年のアカデミー賞国際長編映画賞ショートリストにNetflix映画『雪山の絆』があった。監督を調べたら、『インポッシブル』で壮絶な震災描写を描いたJ・A・バヨナだった。彼のフィルモグラフィーを確認すると、どうやら災害描写に定評がありそうだ。ということで未観だった『ジュラシック・ワールド 炎の王国』を急遽鑑賞することにした。本作は、何年か前に美容師がめちゃくちゃ文句を言っていた作品で、ラストも薄々知っていた。とはいえ、大袈裟だろうと思っていた。実際に観てみると、これが困った作品であった。
『ジュラシック・ワールド 炎の王国』あらすじ
シリーズ14年ぶりの新作として2015年に公開され、記録的な大ヒットとなった「ジュラシック・ワールド」の続編。前作でハイブリッド恐竜のインドミナス・レックスとT-REXが激闘を繰り広げ崩壊したテーマパーク「ジュラシック・ワールド」を有したイスラ・ヌブラル島に、火山の大噴火の兆候が表れ、恐竜たちの生死を自然に委ねるか、あるいは危険を冒してでも救い出すか、人間たちは判断を迫られていた。そんな中、恐竜行動学のエキスパートのオーウェンはテーマパークの運営責任者だったクレアとともに、恐竜たちを救うべく行動を開始するが、その矢先に島の火山で大噴火が発生する。恐竜と心を通わせるオーウェンを演じるクリス・プラット、クレア役のブラウス・ダラス・ハワードらメインキャストが続投。監督は前作のコリン・トレボロウに代わり、「永遠のこどもたち」「インポッシブル」などで注目されたスペインの出身のJ・A・バヨナが新たに務める。
極端を極めた垂直水平運動
凶悪な恐竜が人を食べようと上から襲いかかってくる。逃げる男の前に上から救いの梯子が降ってくる。上方向から死と生が迫り来る宙吊り状態の中で彼は救われる。修羅場映画において、ひとつの修羅場を乗り越えた先に新しい修羅場が発生することが重要である。彼が救われた刹那の安堵、下からの巨大生物により死を迎える。この運動力学を緻密に詰めた冒頭は、本作におけるテーマを象徴しており、クライマックスにおいても垂直運動、つまり落下が重要な鍵となるのである。災害を描く監督はスピルバーグやエメリッヒなど数多く入れども、J・A・バヨナの生々しく大胆でリアルなアプローチは異彩を放っている。
例えば、終盤、遺伝子操作された凶悪な恐竜がショーウィンドウに突っ込んでくる場面がある。セットの落下により、恐竜は動けなくなる。同時にヒロインも挟まって動けなくなる。同時にセットの落下により動けなくなるのだが、恐竜がズンと垂直方向にダメージを食らった反動で爪がヒロインに突き刺さるのである。ほかにも、溶岩がポタポタ垂れる研究所に恐竜が攻めてくる中、梯子を昇って脱出する場面。恐竜は、溶岩の落下でダメージを受けながら対象を捕食しようとする。人間サイドは梯子を昇るわけだが、ギミックにより梯子が落下してしまい修羅場と化すのである。このように、J・A・バヨナが演出する垂直運動は、常に複数のベクトルの上下ベクトルが交差する中で行われるのでスリリングで面白い。
しかし、水平運動はポンコツである。『インポッシブル』『雪山の絆』であれだけ恐ろしく描けていたにもかかわらず、頭を抱えるほどに雑である。迫り来る溶岩の中、麻酔漬けになったクリス・プラットが滑稽な格好で逃げる場面から既に怪しいのだが、コロコロボールで火山降り注ぐ島から脱出するところで決定的となる。都合よく倒木に寄りかかるボール。恐竜たちが、倒木を粉砕することで不自然に加速がつき、ボールの搭乗口も乗りやすい場所へと移動していく。このあまりにも製作側の都合で動かされるボールには苦笑しかでなかった。その後も、走ってトラックに乗ろうとする場面があるのだが、車のエンジンかからないネタを回避し、船に乗るところで車輪の空回りを発生させるのだが、垂直運動の複雑さはどこいったレベルでの無理矢理な宙吊り状態となっており興醒めしていくのである。
それは問題のクライマックスでも発生する。遺伝子操作された恐竜を華麗なる落下で撃退した後、恐竜たちが爆発寸前の研究所から脱出しようと押しくら饅頭状態となっている。その中で、主人公たちは苦渋の決断を強いられる。大人たちは、感情の面では恐竜を解放したいと考えるが、社会の側面では生態系の激変をもたらすのでやるべきでないと決断する。しかし、子どもが感情を優先させて、扉のボタンを押しバッドエンドを引き起こしてしまう。恐竜がぎゅうぎゅう詰めになっている様子は噴飯物なのだが、大人ができない決断を子どもに行わせることで罪を緩和させる卑怯な脚本に頭を抱えた。確かに、美容師がキレたのも納得な強引な結末であった。
結果として、微妙な作品であり、この次の作品ではさらに問題の巨大イナゴ事件が起きているようなので実に罪深い映画だなと思った。
※映画.comより画像引用