ホワイト・ノイズ(2022)
White Noise
監督:ノア・バームバック
出演:アダム・ドライバー、グレタ・ガーウィグ、ドン・チードル、ラフィー・キャシディetc
評価:65点
おはようございます、チェ・ブンブンです。
ノア・バームバックがドン・デリーロの同名小説を映画化したと聞いて、いまいちピンと来なかった。実際に観てみると、ドン・デリーロというよりかは別の3要素から成り立つ奇妙な作品であった。
『ホワイト・ノイズ』あらすじ
「マリッジ・ストーリー」「フランシス・ハ」のノア・バームバック監督が、アダム・ドライバーを主演に迎えて描く風刺的な人間ドラマ。
原作は、アメリカの作家ドン・デリーロによる同名小説。化学物質の流出事故に見舞われ、死を恐れるあまり錯乱してしまった大学教授が、家族とともに命を守るため逃走する。現代アメリカに生きる家族が死を身近に感じる環境に置かれたことで、愛や幸福といった普遍的な問題に向き合っていく姿を描く。
主演は、「スター・ウォーズ」シリーズのカイロ・レン役で広く知られ、「マリッジ・ストーリー」でもバームバック監督とタッグを組んだアダム・ドライバー。共演には、MCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)作品のジェームズ・“ローディ”・ローズ/ウォーマシン役でおなじみのドン・チードル、バームバック監督の公私にわたるパートナーでもある、「レディ・バード」のグレタ・ガーウィグ。2022年・第79回ベネチア国際映画祭コンペティション部門出品。Netflixで2022年12月30日から配信。一部劇場で同年12月9日から公開。
ノア・バームバックのアメリカ映画あるある早く言いたい
その3要素とは、「スティーヴン・スピルバーグ」「デヴィッド・リンチ」「ゾンビ」である。前半はスピルバーグ映画に恨みがあるのかと思う程に露悪的に彼の要素を抽出した作劇となっている。ヒトラー学を教えている教授が、化学物質流出により家族と共に避難を余儀なくされる。パニックになった市民が映し出されるのだが、無闇に人を轢き、木に激突し始める。さらには、主人公が乗る車は川へ突入し、流されながらサバイバルしていく。ヒステリックにビービーと家族が叫び、そこに陰謀的なものが渦巻くのである。そして、冒頭からアメリカ映画におけるカークラッシュ描写に対して熱く語る。執拗に、フッテージを挿入し、いかにも「アメリカ映画の爆破あるある早く言いたい」をやりたそうにしているのだが、いざ本番を迎えるとこれがしょぼかったりする。無論、爆発自体は凄まじいのだが、衝突のさせ方が中途半端なのである。中盤以降は、精神不安定に陥ったアダム・ドライバーがデヴィッド・リンチ映画のような色彩を放つ空間へと迷い込み会話劇が発生する。困惑しながら、全体を見つめ直すと『ゾンビ』から本質を抽出したような作品であることが分かってくる。スーパーマーケットは本作において聖域のような空間として機能する。有毒物質が食べ物に含まれていようが、それしか選択肢はないと受容する。膨大な選択肢があるように見えるスーパーマーケットだが、実はそこまで多くない。むしろ選択肢が多かったり、漠然とした有害が存在することにより不安になる。スーパーマーケットは明確化された不安であり、不安を明確にさせることで心に平穏を取り戻す。なのでこの物語の着地がスーパーマーケットであるのだ。ゾンビがショッピングセンターにやってきて徘徊する姿を通じて、現代人の行動を分析した。それをノア・バームバックは再解釈したように捉えた作品とすると一見難解に思える本作もスッと腑に落ちる部分があるだろう。また、本作はアンドレアス・グルスキー『99セント』から構図を引用している部分もある。この辺りからも分かることが多そうだ。
※映画.comより画像引用