【MUBI】『Travelling on One Leg』コラージュにおける暴力性

Travelling on One Leg(2015)

監督:Alexandru Petru Bădeliţă
出演:SONIA CASANDRA ANDREICA

評価:70点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

最近は実験映画を集中的に観るようにしている。MUBIで『Travelling on One Leg』を観たのだが、演出が面白い作品であった。

『Travelling on One Leg』あらすじ

In 1985, in Communist Romania, the thirty year-old Irene falls deeply in love with a German, Franz. When Franz leaves Romania, Irene decides to follow him to Berlin to be with him. After her arrival, Irene gradually comes to realize that Franz no longer wants to be with her.
訳:1985年、共産主義のルーマニアで、30歳のアイリーンはドイツ人のフランツと深い恋に落ちる。フランツがルーマニアを離れると、イレーネは彼についてベルリンに行くことを決める。到着後、イレーネは次第にフランツがもはや自分と一緒にいることを望んでいないことに気づく。

MUBIより引用

コラージュにおける暴力性

本作はコラージュスタイルの作品である。正方形画郭にポートレートのように女性の痛みを刻み込む。やがて、彼女は自分の中のモヤモヤを投影するようにコラージュへとぶつけていく。画には文字や様々な素材が詰め込まれているのだが、どこか暴力的である。そこからコラージュにおける要素を切り刻む様と、人間心理における過去の断片を繋ぎ合わせる暴力性を紐づけていく。人間心理を強調するために、文字を使った重ね合わせをおこなっているのだが、その手数が多く、バキバキに決まった構図の隙間を埋めていくように文字を敷き詰めていく過程が面白かった。また、コラージュによる内なる自己との対話を通じて自己分裂していく様を、空間に自分の分身を並べることで表現しているのが興味深かった。こういう映画はMUBIでないと遭遇しないなと思うのであった。

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※MUBIより画像引用