『家族日誌』ツンデレ兄の内なる世界

家族日誌(1962)
CRONACA FAMILIARE

監督:ヴァレリオ・ズルリーニ
出演:マルチェロ・マストロヤンニ、ジャック・ペラン、サルヴォ・ランドーネ、シルヴィーetc

評価:90点

Filmarksに感想をアップしているがブログに反映させてない作品を見つけたので本日は、こちらに転載する。本作はキネマ旬報ベスト・テンに掲載され、TSUTAYA渋谷店にVHSが存在するがあまり話題にならない作品である。しかし、これが凄い作品であった。

『家族日誌』あらすじ

エンリコ(マルチェロ・マストロヤンニ)と弟ロレンツォ(ジャック・ペラン)の母は弟を生んで死んだ。父は戦傷のため入院していたのでロレンツォは英国貴族の執事サロッキ(サルボ・ランドーネ)の許に里子としてもらわれていった。エンリコは祖母と一緒に貧しく別々に育てられた。長い年月が過ぎた冬のある日、偶然再会した。エンリコは植字工として働きながらジャーナリストになるため必死に勉強していた時である。ロレンツォは厳格な養父を嫌って家を出て来たのだった。翌朝、兄弟は老人ホームにいる祖母(シルビア)を訪れた。彼女にとって、許される面会日がいかに喜ばしかったことか。弟を連れてサロッキの家を訪れたエンリコに対して、彼は相変わらず高慢な態度を見せた。彼は貴族に死なれてから没落、家計も苦しくなっていた。

映画.comより引用

ツンデレ兄の内なる世界

男が雑然とした部屋で何かをまだかまだかと待っている。電話が鳴る。男は受話器を取る。弟が死んだようだ。男はがらんとした町を歩き帰路に着く。そして、壁に掛かった絵から弟との思い出を反芻する。弟が産まれたせいで母が死んだ。彼はそう睨む。養子に出され、離れ離れになった弟と久しぶりに再開する。彼はロクに勉強せず、不良仲間と卓球をしている。声をかけようかかけまいか悩む男。しかし、弟は彼を認知しており、「アイツがおいらの兄さ!」と突然指を向ける。こうして再会する二人。弟は勘当されたので自宅に引き取ることとなる。貧しさや家族の閉塞感を兄は引き入れ、自由奔放な弟に蔑視の目を向けつつ不器用な愛を注いでいく。夏目漱石や太宰治の小説さながら、重厚な人間の内なる心を描いた作品。嫌いの裏返しとしての愛を女々しく回想していくのだが、町並みを映すカメラワークやドラマティックな再会シーンなど撮影のメリハリが素晴らしく、兄の葛藤が刺さりに刺さる作品でした。

※MUBIより画像引用