『夢みるように眠りたい』実写で今敏テイストな日本映画が作られていたとは

夢みるように眠りたい(1986)

監督:林海象
出演:佳村萌、佐野史郎、大竹浩二、松田春翠etc

評価:80点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

Amazon Prime VideoではTLでも話題にならないような激レア映画が配信されていることがある。今回、『夢みるように眠りたい』を見つけた。面白い伝説的作品であることは小耳に挟んでいたが、なかなか遭遇する機会がなかった。実際に観てみるとこれが良かった。

『夢みるように眠りたい』あらすじ

「私立探偵濱マイク」シリーズで知られる林海象監督が1986年に手がけた長編デビュー作で、昭和30年代頃の浅草を舞台にモノクロ&サイレントで描いた探偵ドラマ。大正7年。日本初の女優主演映画といわれる帰山教正監督作「生の輝き」よりも前に、女優・月島桜が主演した「永遠の謎」という映画があった。しかし同作は警視庁の検閲によって妨害され、ラストシーンが撮影されないまま映画史から姿を消した。時は流れ、昭和初期の東京。私立探偵・魚塚甚のもとに、月島桜と名乗る老婆から、誘拐された娘・桔梗を探して欲しいとの依頼が舞い込む。調査を進めるうち、魚塚はこの事件がまるでドラマのように出来すぎていることに気づく。佐野史郎の映画初出演&主演作。2020年12月、東京・ユーロスペースほかにて、デジタルリマスター版でリバイバル公開。

映画.comより引用

実写で今敏テイストな日本映画が作られていたとは

日本の場合、映画の世界に迷い込むみたいなファンタジーはチープなCGになってしまうため、アニメでやると上手くいく。それこそ今敏の作品が成功例であり、今だと湯浅政明がシームレスな虚構への誘いを実装できる。だが、1980年代に実写でそれをやろうとした人がいた。サイレント時代のチャンバラ映画の素朴で面白い忍者アクションの再現。ノスタルジックな雰囲気に惹き込まれると、映画も歴史から姿を消した作品の撮影現場へと切り替わり、傍観者から影響を与える者へと変わっていく。単にファンタジー描写として魅力的なだけに留まらず、歴史から失われたものを調べていくロマンを具現化していくような演出となっており、演出のための演出から一歩飛び出したものとなっている。トリッキーな映画は多いけれども、軽妙にロジックを組んで盛り上げていく作品を私は観たいものである。サクッと観られる怪作であった。