とにかく見にきてほしい(2022)
原題:Tenéis que venir a verla
英題:You Have to Come and See It
監督:ホナス・トルエバ
出演:イチャソ・アラナ、フランチェスコ・カリル、チャノ・ドミンゲス、イレーヌ・エスコラー、ビト・サンス、ホナス・トルエバetc
評価:65点
おはようございます、チェ・ブンブンです。
EUフィルムデーズ2023でホナス・トルエバの『とにかく見にきてほしい』が上映されていた。邦題が『とにかく見にきてほしい』と必死感ありすぎてツボったので早速観てきた。ホナス・トルエバ監督といえば、『Who’s Stopping Us』、『8月のエバ』とカイエ・デュ・シネマが推しているイメージが強い。今回、初対面だったのだが、なるほどカイエが好きそうなバカンス映画を作る監督であった。
『とにかく見にきてほしい』あらすじ
エレナとダニエルは、クラシック音楽のコンサートで再会した友人カップルがマドリードを離れて郊外に移住することを聞き、半年後に彼らのもとを訪ねる。マドリードが大好きな友人カップルは、本当に地方の街で暮らして幸せなのだろうか、新しい環境で満足しているのだろうか、と問い かける。
ライフステージが上がることへの見栄
コンサートで友人カップルが再会して飲み会となる。だが、妙にアンニュイな空間がそこに流れる。その正体が分かるのは半年後の再会だ。だるそうに、ぐだぐだした移動を終え、エレナとダニエルはカップルの家へとたどり着く。そして食事になる。ビジネス書のようなものを煽る展開になっていき、女が反発するように胡散臭い環境に関する本をありがたがって読む。しかしそれはハリボテの知識武装である。この手の本は抽象的なことが書かれている。それを自分の中で具体化し、再度抽象化しなければ自分の言葉にならないのだが、勢いで反発しているのでどうしようもない返しとなってしまう。
本作はライフステージが上がることに対する不安を他人と比較することで埋め合わせようとする醜さを皮肉った作品のように見える。結婚、引っ越し、子育てとライフステージが上がっていくことで、敷かれたレールの上を歩いているかのような気分になる。その不安が教養への渇望となっていく。ビジネス書はどうか?なんだか敷かれたレールの上にある本だ。もっと教養をと求めて胡散臭い環境書に手を出し、フッと嘲笑われてしまうのである。
その醜さと対照的に画は美しい。陽光を背にする画は惹き込まれるものがあった。一方で、終盤のフィルムタッチの画はノイズだろう。あからさまに「エモさ」を出そうとしているあざとさが鼻についた。
※映画.comより画像引用