a human position(2022)
監督:アンダース・エンブレム
出演:アマリー・イプセン・ジェンセン、Maria Agwumaro、ラーズ・ハルボル・アンドレセン、Pål Bakke、Karoline Isaksen etc
評価:70点
おはようございます、チェ・ブンブンです。
ここ最近は空間をバキバキに決めてくる映画に面白い作品と注目監督がある気がする。直近でいえばリッキー・ダンブローズ『The Cathedral』、ラモン・チュルヒャー『ガール・アンド・スパイダー』、Sofia Bohdanowicz『A WOMAN ESCAPES』が面白かった。さて、この手の映画はMUBIを掘るに限る。実際に探してみたらノルウェー映画『a human position』を見つけた。Twitterでフォロワーさんに「なら国際映画祭」で上映されていたことを知った。『プレイグラウンド』しかり、選定眼が鋭い映画祭だと思う。ということで感想を書いていく。
『a human position』あらすじ
Long blue hours characterize summer nights in the sleepy Norwegian port town of Ålesund. Asta is a young journalist working for the local newspaper. When she stumbles across the strange story of a refugee’s forced deportation, she finds new meaning in her work and life.
訳:ノルウェーの静かな港町オーレスンの夏の夜は、青く長い時間が特徴的である。アスタは地元新聞社に勤める若いジャーナリスト。ある日、難民の強制送還をめぐる奇妙な物語に出会い、彼女は自分の仕事と人生に新たな意味を見出す。
ただそばにいるだけで
朝起きて、新聞読みながら朝食を食べる。その上に猫がちょこんと座って、ご飯を奪おうとちょっかいを出す。そんな尊い空間から仕事は始まる。ジャーナリストをしているアスタの仕事風景が映し出される。PCで事務処理を行う。環境活動家にインタビューを行う。そういったルーティンで支配されている。アスタの顔は少し曇り気味。アンニュイな生活が紡がれる。そんな彼女のアンニュイさを癒すのはガールフレンドのライブだ。ライブは明るい正確だ。ピアノを弾き、歌い、一人で玉転がしゲームで遊ぶ。そんな彼女と生活を共にする。何気ないのだが、その何気なさをフォトジェニックな構図で捉えることで尊さを引き出す。ただ神経衰弱をするだけ、歯を磨くだけなのに眩い空間に観る者の心が浄化されていくのだ。ただそこにいるだけの美しさに満ちている。そんなアスタはやがて、難民強制送還の話を知り、心の中で何かが分かる。我々の日常も退屈なルーティンの中でふと、人生の道を見つけるきっかけを見つけることがあるだろう。その些細な瞬間を美しく捉えた映画。アンダース・エンブレム監督の視点に魅了されたのであった。
※MUBIより画像引用