『MEN 同じ顔の男たち』ソウル・スナッチャーズは罪意識を植え付ける

MEN 同じ顔の男たち(2022)
MEN

監督:アレックス・ガーランド
出演:ジェシー・バックリー、ロリー・キニア、パーパ・ エシエデュ、ガイル・ランキン、サラ・トゥーミィetc

評価:55点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

A24×アレックス・ガーランドの新作『MEN 同じ顔の男たち』を観てきた。あまり、あらすじを調べないで観たのだが、これがとても怖い映画であった。ホラー映画苦手な私にとっては中々キツい作品であったのだ。

『MEN 同じ顔の男たち』あらすじ

「エクス・マキナ」のアレックス・ガーランドが監督・脚本を手がけ、「ロスト・ドーター」のジェシー・バックリー主演で描くサスペンススリラー。

夫の死を目撃してしまったハーパーは、心の傷を癒すためイギリスの田舎町へやって来る。彼女は豪華なカントリーハウスの管理人ジェフリーと出会うが、街へ出かけると少年や牧師、警官に至るまで出会う男すべてがジェフリーと全く同じ顔だった。さらに廃トンネルから謎の影がついてきたり、木から大量の林檎が落下したり、夫の死がフラッシュバックするなど不穏な出来事が続発。ハーパーを襲う得体の知れない恐怖は、徐々にその正体を現し始める。

ダニエル・クレイグ主演の「007」シリーズでビル・タナー役を務めたロリー・キニアが、同じ顔をした不気味な男たちを怪演。

映画.comより引用

ソウル・スナッチャーズは罪意識を植え付ける

邦題が『MEN 同じ顔の男たち』なので、てっきり『アノマリサ』や『マルコヴィッチの穴』のように同じ顔をした人がたくさん出てくるのかと思いきや、中盤まで「どこに同じ顔した人出ているんだ?」と思うぐらいに全く風貌が異なる人が出てきて混乱する。しかも、主人公ハーパーは会う人、会う人が同じ顔していること自体には驚いていないようにみえる。何食わぬ顔で対話するのだ。中盤まで、意味ありげな不穏な描写と、ジャンプスケアの連続にもどかしさを感じながら観ていると、段々と本作が何をやりたかったのかが見えてくる。

本作はある意味『ボディ・スナッチャー/恐怖の街』のギミックに新しい解釈を与える作品である。DV夫が、罪意識をハーパーになすりつた状態で死亡する。その痛みから逃れようと田舎町へやってくる。そこでは同じ顔をした男がねっとりと彼女に歩み寄る。全裸男が家へ侵入しようとする。神父は、彼女に「夫に赦す機会を与えたのか?君が悪いのでは?」と罪意識を与える。警察は、「彼は無実だ」と全裸男を釈放し、子ども(?)はかくれんぼに乗らない彼女に暴言を吐く。増殖していく同じ顔の男は、「罪意識」を増幅させていき、ハーパーを取り込み、加害者へと仕立て上げようとするのだ。実際に、全裸男が吹きかける綿毛をハーパーが吸い込んでしまう場面がある。これは、男の吐きかける罪意識を受容してしまう様子を象徴したものとなっている。また、終盤のあまりに気持ち悪くパワーアップした『ボディ・スナッチャー/恐怖の街』的描写を踏まえると、綿毛=精子のメタファーと考えることもでき、負の連鎖を匂わせる描写であることが分かる。

アレックス・ガーランドのホラー理論こそわからなくはないし、「怖いホラー」としては成功していると思う。だけれども、あのラストがあまりにも凄惨過ぎて苦手な作品であった。
※映画.comより画像引用

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