【アルバム感想】ピーナッツくん『Walk Through the Stars』
アニメ作家、ゆるキャラ、VTuberの仮面を被りながらヒップホップを紡ぎ続けてきたピーナッツくんは、ついにヒップホップの祭典POP YOURSにアーティストとして招かれバイブスをあげた。そんな彼がヒップホップアーティストとして向き合ったアルバム『Walk Through the Stars』だ。日本のヒップホップ事情については疎いものの、アルバムを聴くと明らかに今までとテイストが違う。自由にやってきた彼が、本格的にヒップホップと向き合い、ある意味苦しみ、悩みながら生み出したのであろう形跡が観測できる。そして、そのプロセスで生み出される物語に泣く。
なんといっても「Fulltracker」だ。
適当に買った
Windowsのノーパソ
RTX1080
はじめてみた ピーナッツ3Dが
動くとこ 無我夢中
VTuberとして初めて自分の生み出した像が動いた時の感動を物語っていく。小さいディスプレイ、そこでヌルヌル動く自分の分身、それは確かにハリウッド映画さながらだろう。聴く者の脳髄に感動のヴィジョンを浮かび上がらせる、具体的な情景が紡がれているのだ。
また「KFC」では、ピーナッツくんの代表曲である「グミ超うめぇ」以上に、ループするビートにリリックを乗せようとするある種のリメイクとなっている。「ケンタッキー食う」ではなく「食うケンタッキー」とすることで、ケンタッキーを頬張った時の感動、うめーと叫びたくなる情緒のバイブスを引き上げている。また、「グミ超うめぇ」における「ぐるナイとかにも出てくるべきだろグミ」のオマージュとして「ぐるナイとかでも行ったらいいのに」と仕掛けるユーモアにピーナッツくんの楽曲を追ってきた者は、ニヤリ笑いが染み出してくる。ケンタッキーのオイルのように。
ピーナッツくんの苦悩が滲む曲といえば「Young Pixar」だろう。唯一無二の人生を歩むピーナッツくん。先は見えない。自分で開拓するしかない。「どう森みたくアップデート追いつかなくなるまで」突き進むしかない。その道は深い深いプールで溺れそうだと彼は吐露する。もはや24時間様々なライバーとコラボしたり、ヒップホップの祭典に出演したりと大海原に飛び出しているが、「ガレージバンドの中のYoung Pixar」だと謙虚に、プレッシャーを背に語るピーナッツくん。天才であっても、そこには膨大な努力の瓦礫が積まれていることが薄ら見えるのだ。
さて、「Walk Through the Stars」ライブでどんなピーナッツくんを魅せてくれるのか楽しみだ。
(本業で、障害起きないでください。祈ります。)