The Boy Who Liked Deer(1975)
監督:バーバラ・ローデン
出演:Chuck Willen,Pat McNamara,Greg Kwas etc
評価:90点
おはようございます、チェ・ブンブンです。
『ジャンヌ・ディエルマン ブリュッセル1080、コメルス河畔通り23番地』、『キラー・オブ・シープ』、『マルケータ・ラザロヴァー』と「死ぬまでに観たい映画1001本」レア作が次々と日本公開する2022年。2022/7/9(土)よりシアター・イメージフォーラムにて『WANDA/ワンダ』が公開される。女性の彷徨いを描く本作。数年前に観ているのだが、内容を忘れてしまっているので劇場に駆けつけようと考えている。さて、「死ぬまでに観たい映画1001本」には「バーバラ・ローデンが監督した唯一の作品」と書かれているが、短編映画を2本撮っている。ということで『WANDA/ワンダ』公開を記念して、『The Boy Who Liked Deer』について書いていく。
『The Boy Who Liked Deer』あらすじ
A boy’s penchant for vandalism threatens the deer he loves.
訳:荒らし癖のある少年が、愛する鹿を脅かす。
その鹿にだけは手出さんといて!
学校では不良だが、シカを前にすると優しくなる少年ジェイソンの物語。1分でいかにジェイソンと友人が悪ガキかを示す編集が凄まじい。買い物カートを正面に投げつける。カットは切り替わり、一台は車に激突し、もう一台は階段下に投げ込まれる。石のようなものを投げつけ窓ガラスを破壊。壁にJASONと落書きする。これだけで相当の荒れ具合を魅せる。学校ではとにかく悪態をつく。後ろの席で、だらしなく駄弁っており、先生に怒られ、前の席に移動されても、延々と悪ふざけをする。ついに、「出ていけ」と言われる。
悪ガキ3人トリオで、シカの檻にやってくる。友人は柵を越えて、「お前も来いよ」と言われる。渋々入るジェイソン。二人はシカを追い回し、エサをぶちまけようとしている。しかし、シカに情があるジェイソンは、彼らに怒る。場所を変えることになった3人。今度は学校で先生に復讐するように破壊活動を行なっていく。
この学校での破壊場面が強烈で、ジェイソンが教壇に着くや、上着をポンと投げ、綺麗にラックに収まる場面が漫画的で爽快だ。そして、黒板を前に思い思いの破壊活動を行うのだけれども、すべてのオブジェクトをじっくり魅せていくショットとなっている。シカイジメに対し心を痛めるジェイソンが、学校破壊で一瞬の興奮を得るが段々と居た堪れなくなっていく。18分の短編であり、彼の心境の変化に費やす時間は僅かながらも、シカからヒトへと理解が進んでいく描写に胸が苦しくなる。
後に観た『The Frontier Experience』を踏まえると、恐らくケリー・ライカート監督はバーバラ・ローデンに影響受けていると言える。本作における、破壊行為の後に罪意識が尾を引き心苦しくなってくる物語は『ナイト・スリーパーズ ダム爆破計画』で活かされているだろう。こちらでは、破壊後の罪意識描写に時間を割いているのだ。
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※MUBIより画像引用