【A24】『After Yang』過去の断片を鮮明に辿れる世界での喪失とは?

After Yang(2021)

監督:コゴナダ
出演:コリン・ファレル、ヘイリー・ル・リチャードソン、クリフトン・コリンズ・Jr、サリタ・チョウドリー、ブレット・ディーア、ジョディー・ターナー・スミス、ジャスティン・H・ミンetc

評価:80点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

『コロンバス』で有名となった新鋭監督コゴナダ。小津安二郎映画の右腕脚本家である野田高梧から名前を取り活動する彼が、A24とタッグを組みSF映画を製作した。タイトルは『After Yang』。かなり評判が良いので観たのですが、これがとても切ない作品であった。

『After Yang』あらすじ

In a near future, a family reckons with questions of love, connection, and loss after their A.I. helper unexpectedly breaks down.
訳:近未来、ある家族がAIヘルパーの予期せぬ故障をきっかけに、愛、つながり、そして喪失について考え直す。

IMDbより引用

過去の断片を鮮明に辿れる世界での喪失とは?

白人、黒人、そしてアジア系の子ども、そしてロボットヘルパーのヤン(ジャスティン・H・ミン)。不思議な家族構成の4人がヨルゴス・ランティモス映画のような奇怪な踊りをしながら、シンクロする。しかし、踊りが止まっても、ロボットだけが動き続ける。そして動かなくなった。人型ロボットが子守りをする時代。娘のミカ(Malea Emma Tjandrawidjaja)はヤンのことが好きで、喪失を受け入れられずにいた。なんとか修理しようと、ショップに赴くが復活させることは難しそうだ。

東奔西走しているうちに、ヤンの記憶を覗き込むことになるが、そこに一人の女性がいた。彼女は何者なのだろうか?家族も同然といいながら、ヤンのことを何も知らなかったのでは?父、ジェイク(コリン・ファレル)は喪失を埋めるようにヤンの記憶を辿ることとなる。

今となってはあらゆるものがデータとしてアーカイブできるようになったとはいえ、物質的な耐久力は石板や紙に比べると弱く、粒子のように遠くへ飛んでは消えてしまう。結局は、我々の脳と同じように手繰り寄せなければ、離れていってしまうものである。ジェイクたちがヤンの記憶を辿る時、膨大な宇宙空間を彷徨うようにして記憶の断片を辿る。そしてヤンの知らなかった側面に触れることができる。しかし、失った穴自体はそこに残り続け、切なさとどう向き合うのかを突きつけられる。


10年前に公開された『her/世界でひとつの彼女』が割とライトに、その手の喪失感を扱っていたように感じたのだが、本作は翳りのある室内の中、静かに提示されるアーカイブ映像と自分の感情を対峙させて切なさを消化していく過程に眼差しを向けている。シンプルでストレートな話しながらも、誰しもが経験あるであろう喪失との向き合い方を宇宙空間のような仮想空間を通じて感傷的に表象する。これだけで胸が締め付けられる。

どうやらキノフィルムズ配給で日本公開されるそうだが、これは日本でも共感する人多いのでは?私も、推しのVTuberが引退した時に、きっとミカやジェイクのような胸苦しさを抱えるんだろうなと思いました。

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