鋼の錬金術師 完結編 復讐者スカー(2022)
監督:曽利文彦
出演:山田涼介、本田翼、ディーン・フジオカ、蓮佛美沙子、本郷奏多、黒島結菜、渡邊圭祐、寺田心、内山信二、大貫勇輔、ロン・モンロウ(栗子)etc
評価:55点
おはようございます、チェ・ブンブンです。
ワーナーの漫画原作映画は毎回警戒する。前作がしょっぱい出来であった『鋼の錬金術師』実写化がるろ剣と同じスタイルで2部作公開となった時、一抹の不安がよぎった。Twitterでは前作よりかは良かったよと擁護する声が散見する。確かに唸る部分もあれども、やはり厳しいものがあった。
『鋼の錬金術師 完結編 復讐者スカー』あらすじ
荒川弘の大ヒット漫画を実写映画化した「鋼の錬金術師」の続編となる完結編2部作の前編。亡き母に会いたい一心で錬金術最大の禁忌である人体錬成に挑んで失敗し、失った体を取り戻すため旅を続ける兄弟エドとアル。彼らが訪れた中央(セントラル)では、国家錬金術師ばかりを狙った殺人事件が相次いでいた。犯人は正体不明で、額に十字傷を持つことから「傷の男(スカー)」と呼ばれている。エドとアルも命を狙われ応戦するが、圧倒的な強さを誇るスカーに機械鎧(オートメイル)を破壊され、絶体絶命に追い込まれてしまう。主人公エドを演じる山田涼介ら前作のキャストに加え、スカー役の新田真剣佑、大総統キング・ブラッドレイ役の舘ひろし、オリヴィエ・ミラ・アームストロング役の栗山千明が新たに参加。前作に続き、「ピンポン」の曽利文彦監督がメガホンをとった。
漫画的カットの反復について
結論から言えば退屈であった。様々な強力な技や攻撃力を持つヒーロー/ヴィランが登場するにもかかわらず、強そうに見えないのが致命的で、見栄を張って表面上で威嚇しあっているだけにしか見えない。原作がそうなのかもしれないが、ヴィランたちが頻繁に逃げ出すので卑怯に見えてしまう。フィクションだからこそ、正面から戦ってほしいな、『るろうに剣心 伝説の最期編』の志々雄真実のように、もはや集団リンチな状況下でも一人一人相手にするようなカリスマ性を欲してしまうのだ。だから話にあまり興味が持てなかった。
しかし、前作からの改善点も見受けられ、まず大泉洋や國村隼がハガレンの世界観に溶け込んでいない問題は、今回「寺田心」一人に集中させてノイズを抑えている。また、ヒーロー/ヴィランが対話や政治的流れの中で次々と関係性が変化していく複雑さをテンポ良く行なっているところは注目すべきだろう。MCUが最近できていない部分をハガレンができている。ここは嬉しいところであった。これを踏まえると、ヒーロー/ヴィランが強そうに見えないのも腑に落ちる。つまり、人間味のあるドラマを描いているのだ。ホムンクルスでさえ、人間社会に溶け込んでいる以上、人間的思考をする。政治局面で簡単に味方になり裏切る。人間の一貫性のなさを全登場人物が持っており、本人の正義の中で一貫性を保つような動きとなっているのだ。
また、本作は例のごとく説明台詞で進行する。漫画の吹き出しのようにペラペラと喋る。それを逆手にとり、編集も漫画的となっている。特に注目すべきは序盤である。エドワードが列車に乗り込み、客車に入る。足に違和感があり下を向くと、人が倒れている。これは現実的ではない情景だが、漫画だとありがちな光景だ。漫画の場合、人が倒れると、次には別のアクションが入る。ここでは食事を通じた自己紹介だ。同様のシークエンスを後に反復させるのだ。この荒唐無稽さは本作最大の魅力であろう。
さて、後日公開される続編は果たして良きフィナーレを迎えられるのだろうか。不安でしょうがない。
※映画.comより画像引用