【ネタバレ】『アンビュランス』その車、霊柩車につき

アンビュランス(2022)
Ambulance

監督:マイケル・ベイ
出演:ジェイク・ギレンホール、ヤヒヤ・アブドゥル=マティーン2世、エイザ・ゴンザレス、デヴァン・ロング、ギャレット・ディラハントetc

評価:75点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

もし、海外でIPPONグランプリが開催され、「マイケル・ベイ次回作のタイトルは?」とお題が出されたら、間違いなくIPPON取れるであろう。『Ambulance(救急車)』と聞いた時、私は爆笑した。絶対にロクなことが起こらないぞと。実際に観てみると、90分で終わりそうな話を、爆破とドローン撮影に命かけすぎてヤサイニンニクマシマシ136分の作品に仕上がっていた。しかも、余計な前座は廃されており、金を借りに来たが最後。

「お金欲しい?じゃあ銀行強盗しかないよね?もう車来ているから行こう!」

とディズニーランドのアトラクション並の突発的気楽さで、開始10分にして戦争が始まる異常な作品でした。面白ポイントが多すぎるので今回はネタバレありで語っていく。

『アンビュランス』あらすじ

「トランスフォーマー」シリーズのマイケル・ベイ監督がジェイク・ギレンホールを主演に迎え、強盗を働いた元軍人の主人公が、瀕死の警官を乗せた救急車で逃走劇を繰り広げる姿を描いたノンストップアクション。アフガニスタンからの帰還兵ウィルは、出産直後の妻が病に侵され、その治療には莫大な費用がかかるが保険金も降りず、役所に問い合わせてもたらい回しにされるだけだった。なんとかして妻の治療費を工面しようと、血のつながらない兄のダニーに助けを求めるウィル。犯罪に手を染めるダニーが提案したのは、3200万円ドル(約36億円)もの大金を強奪する銀行強盗だった。計画通りならば、誰も傷つけることなく大金だけを手にするはずだったが、狂いが生じて2人は警察に追われる事態に。やむを得ず逃走用に救急車に乗り込んだ2人だったが、その救急車はウィルに撃たれて瀕死となった警官を乗せていた。乗り合わせた救命士キャムも巻き込み、ダニーとウィルはロサンゼルス中を猛スピードで爆走することになる。ダニー役をギレンホールが演じるほか、ウィル役を「マトリックス レザレクションズ」のヤーヤ・アブドゥル=マティーン2世、キャム役を「パーフェクト・ケア」のエイザ・ゴンザレスがそれぞれ演じる。2005年製作のデンマーク映画「25ミニッツ」のリメイク。

映画.comより引用

その車、霊柩車につき

帰還兵ウィル(ヤーヤ・アブドゥル=マティーン2世)は電話をかける。12番が出る。11番、13番は知っている。12番は初だ。妻の窮状を訴えるが門前払いされる。役所は困っている人に非常だし、マニュアル化され心を失ってしまった社会システムに心を痛めている。退避するように、救急隊員の女性キャム(エイザ・ゴンザレス)は今日も激しくクラッシュする車から人を助けようとしている。ウィルは兄のダニーに金の相談をしに行くが、コンビニ行く感覚で銀行強盗に連れ込む。メンバーは明らかに連携が取れてないし、サンダル野郎までいる。果たして大丈夫だろうか?いや大丈夫な訳が無い。早々に、警察官が閉店している銀行に無理やり入り、何かを嗅ぎつける。そして緊迫の糸が切れた時、街は『ヒート』さながらの地獄絵図となり、そこから2時間地獄のドライブが始まる。

仲間全滅となったウィルとダニーは救急車を奪い、逃走するが、そこには重症の警官がいる。良心を痛めたウィルは、彼を生かしながらの逃亡を行う。異常なテンションで進む本作は、マイケル・ベイが面白いと思った演出を延々とサービスされていく。その狂った描写に笑いが溢れてくる。例えば、警察に追われる中、手術をすることになる。キャムは外科手術できないのに、ウィルの強引さで、仲間に電話させる。しかし、彼も扱い切れないほどの大手術になると判明する。彼は増援としてゴルフ場にいる仲間と連絡し、ゴルフ場、仲間の部屋とオンライン会議を繋ぎながら、決死の手術を敢行するのだ。ただでさえトンデモない状態なのに、わざわざ、臓器を握っている最中に、手術対象の警察官が起きてしまい、暴れはじめる。それをウィルが拳で永遠の眠りにつかせる勢いで殴りつけ沈黙させるのだ。そして臓器は爆発、死亡まであと60秒の修羅場の中で、キャムは髪留めで応急処置を施し、なんとか延命させる。書いている方も、信じられないぐらいに恐ろしいシーンだ。

ここで脂が乗ってきたのか、現実からかけ離れた方程式で物語は爆走する。複数台の救急車を走らせ、警察を撹乱させる場面。なぜか、ウィルたちの救急車だけ緑色に染められている。45秒で塗った為、明らかに不審車なのだが、全く警察にバレない。そうです、この映画は警察もどうかしているのです。ペットの大型犬も追跡劇に参加してたり、チートス貪り食いながら追いかける不良が参戦していたりして、物事だけが大きくなっていくのだ。

ただ、こうした異常な描写もマイケル・ベイの愛情たっぷりに撮られているため、まるで竜宮城で接待を受けている気分となり、心地よい映画であった。こういう映画こそ映画館で楽しみたいし、みんなで語り合いたいと思いました。

※映画.comより画像引用