MUSEO(2018)
MUSEUM
監督:アロンソ・ルイスパラシオス
出演:ガエル・ガルシア・ベルナル、サイモン・ラッセル・ビール、イルセ・サラス、リン・ギルマーティン、アルフレード・カストロ、レティシア・ブレディス、リサ・オーウェン、Leonardo Ortizgris etc
評価:80点
おはようございます、チェ・ブンブンです。
ハリウッドやアメコミ映画は多様な新鋭監督を発掘しており、クロエ・ジャオやモハメド・ディアブといった監督がMCU作品を手掛けていたりする。次に来るのは誰かと考えたときにタリア・ラヴィ、エリック・マッティ、そしてアロンソ・ルイスパラシオスの名が頭に浮かんだ。アロンソ・ルイスパラシオスは長編作品3本全てにおいてベルリン国際映画祭で受賞している今注目の作品である。Netflixで配信されている『コップ・ムービー』はメキシコ警察24時でありドキュメンタリーに見えるが、突如コミカルな追いかけっこが始まったりジャンルを横断する作品。その斬新さから第71回ベルリン国際映画祭で芸術貢献賞を受賞している。今回、彼の『MUSEO』と『グエロス』を観たのだが、どちらもジャンル横断型の映画であり、マルチバースが叫ばれるマーベル映画との相性が良いと思いました。
『MUSEO』あらすじ
In 1985, a group of criminals mock the security of the National Museum of Anthropology in Mexico City to extract 140 pre-Hispanic pieces from their showcases.
訳:1985年、メキシコシティの国立人類学博物館の警備をあざむき、展示されている先史時代の作品140点を抜き取るという事件が発生した。
アロンソ・ルイスパラシオス、ジャンル映画のマルチバース
獣医学の学士を取得しようと勉学に励むも、30代になり未だに実家暮らししている者が博物館強盗を計画する。Juan Nuñez(ガエル・ガルシア・ベルナル)は国立人類学博物館で仕事をしており、そのノウハウでお宝を盗めると考えたのだ。親友Benjamin Wilson(Leonardo Ortizgris)と早速計画を練る。そして、実行に移す。
まるでジャン=ピエール・メルヴィル『仁義』のような静かなるサスペンスが幕を開ける。ゆっくりと博物館に侵入し、ショーケースの前に現れる。釘を打ち込み、ワイヤーを手早く釘からコンセントへと伸ばし、接着剤を溶かしてケースを開ける。煙が悪の香りを増幅させる。一つ目の成功に味をしめて、次々と仮面や装飾具を盗み出す。しかし、急に電気がつく。見回りだ、急いで隠れるが、通路にライトを放置してしまう。この時のバレるかバレないかの緊迫が凄まじい。
なんとか盗みに成功するが、すぐさまニュースになる。 Juanの父も「こんな泥棒は広場に吊るすべきだ。」とキレ始める。これは早急に売らねばと、二人は知人を目指し、世界遺産である古代都市パレンケを目指すのだ。モラトリアムものから重厚なケイパーものにシフトし、そこから青春ロードムービーに発展するのがユニークだ。画の質感がガラリと変わり、爽やかな旅路が展開される。そこでも緊迫感が波のように一定周期で訪れる、突然警備の男に車を止められガッツリ宝を見られる。これは絶体絶命かと思うと、「手作りアートかい?…おや?君、顔立ちいいね。どっかで見たことあるぞ!ちょっと折角だし、サイン書いてよ。」と言われ難を逃れる。アートコレクターとの商談ではそれを遥かに上回る緊迫感が流れる。
青春ロードムービーパートでは、突然ホームムービーのタッチでスパイ映画さながらのアクションが展開されたりして、話全体はオーソドックスなケイパーものなのに新鮮さがあります。ジャンルを横断しながらも、ラストはケイパームービーらしくカッコいい散り方を魅せる。アロンソ・ルイスパラシオス監督がジェイソン・ステイサムやリーアム・ニーソン主演の映画を撮ったら絶対面白い。これは今後の活躍に期待だ。
※MUBIより画像引用