ルッツ(2021)
Luzzu
監督:アレックス・カミレーリ
出演:ジェスマーク・シクルーナ、ミケーラ・ファルジア、デイヴィッド・シクルーナ、Frida Cauchi、Uday McLean etc
評価:30点
おはようございます、チェ・ブンブンです。
映画祭シーズンですね。毎週のようにオンライン/リアルで映画祭が開催されるシーズンに突入しました。今週はSKIPシティ国際Dシネマ映画祭にフォーカスを当てていきます。SKIPシティ国際Dシネマ映画祭の選定眼は鋭いものがあり、過去には第89回アカデミー賞外国語映画賞にノミネートされた『タンナ』をいち早く発掘した実績があります。今回は、非常に珍しいマルタ共和国の映画『ルッツ』が選出されていましたので手始めに観てみました。
『ルッツ』あらすじ
漁師のジェスマークはある日、自分のルッツに穴が空いていることに気づく。折しも、家業としてきた漁業は日に日に厳しさを増していた。妻と生まれたばかりの成長障害のある息子を養うため、彼は決断を迫られていく。
※SKIPシティ国際Dシネマ映画祭サイトより引用
マルタ映画、社会システムにはめられて
貧困は自己責任だと言う人がいるが、それは強者の理屈であり、多くの場合は社会システムに嵌められて貧困の連鎖から抜け出せないものである。
ジェスマーク(ジェスマーク・シクルーナ)は、マルタの漁師である。最近は漁獲量が減ってしまい苦境に立たされている。原因はEUの大型のトロール船やEUの漁獲制限だったりする。大きな資本主義のシステムによって、彼は苦境に立たされている。レストランなんかも、購買ルートが確立されてしまい以前のように情で魚を買ってくれることも少なくなってしまった。そんな中、愛するボートに穴が空いていることに気づく。彼の不幸は連鎖していく。息子は発達障がいを抱えており、高額な医療費が必要となっていくのだ。家族の関係性もすっかり冷え切ってしまい、行き場を失った彼は闇の市場を開拓し、違法を犯すようになってしまう。
太陽のように明るいボート、マルタの美しい風景と反して、ひたすら不幸を連ねていく。EU社会のルールに巻き込まれていく小さな存在を告発した作品であるが、残念ながら画としての面白さが皆無で、ありふれた貧困ものに留まってしまった。こう言う映画は大切なのはわかる。でもこれは映画だ。映画はやはり画としての説得力や、問題提起に惹きこむものが必要だと思う。日本映画でもよくある、不幸を陳列して同情を得るだけの作品に留まっているのがもったいない作品でありました。
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※IMDbより画像引用