『スパイラル:ソウ オールリセット』組織に染まる戦慄の渦へようこそ

スパイラル:ソウ オールリセット(2021)
Spiral: From the Book of Saw

監督:ダーレン・リン・バウズマン
出演:クリス・ロック、マックス・ミンゲラ、マリソル・ニコルズ、サミュエル・L・ジャクソン、モーガン・デイビット・ジョーンズ、アリ・ジョンソン、ダン・ペトロニエヴィッチ、ゾーイー・パーマー、ナズニーン・コントラクター、エディ・インクセッターetc

評価:70点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

自宅に、ティファニー色の箱が送られてきた。指輪か、香水か、はたまたクロワッサンか?恐る恐る箱を開けてみると、紅いコースター状のものがが入っていた。

「緊張の夏、渦巻(スパイラル)の夏。」

ということでアスミック・エースさん( @asmik_ace )から残暑見舞いとして「蚊取り線香」をいただきました。今回、アスミック・エースさんのご厚意で2021/9/10(金)公開の『ソウ』シリーズ最新作『スパイラル:ソウ オールリセット』を一足早く観ましたので感想を書いていきます。

『スパイラル:ソウ オールリセット』あらすじ

2004年製作の第1作以降、これまでに8作品が製作された人気スリラーシリーズ「ソウ」シリーズの新たな一作。過去のシリーズと関係する登場人物が一新され、ジグソウの後継者をめぐる物語をリセットし、ジグソウを凌駕する新たな猟奇犯が登場する。地下鉄の線路上で舌を固定され、宙吊りになった男。猛スピードに迫った電車により、男の体は四散する。それが、猟奇犯が警察官をターゲットに仕掛けたゲームのはじまりだった。捜査にあたるジークと相棒のウィリアムを挑発する不気味な渦巻模様と青い箱。やがて、伝説的刑事で、ジークの父であるマーカスまでもが姿を消し、ジークは追い詰められていく。主人公ジーク役をクリス・ロックが演じ、父のマーカス役にはサミュエル・L・ジャクソン。監督は「ソウ2」から「ソウ5」までシリーズ3作品でメガホンをとったダーレン・リン・バウズマン。

映画.comより引用

組織に染まる戦慄の渦へようこそ

『ソウ』シリーズは、残虐なデスゲームと警察の追跡劇のマリアージュがユニークなものとなっている。そして回を追うごとに、残虐性だけでなく暴力の哲学もパワーアップしている。『ソウ3』では警察官が危篤状態にあるジグソウを看病する女を前に正義が揺らぐ話と、息子を殺された男の前に現れた恨むべき存在に対して赦すか否かの問いを突きつけられるゲームを交差させ、人間心理の白黒つけ難い闇の存在を表象している。

さて、今回『透明人間(2020)』のリー・ワネルでも『ザ・フィースト』シリーズのパトリック・メルトン&マーカス・ダンスタンコンビでもなく、『ピラニア 3D』のジョシュ・ストールバーグ&ピーター・ゴールドフィンガーを脚本に携え心機一転作りあげた新作(リー・ワネルは製作総指揮に回っています。)は、警察ものを超えて中堅社員が組織に染まっていく悲哀を描く異色作であった。

伝説の刑事マーカス(サミュエル・L・ジャクソン)に憧れ、必死に食らいついていったジーク・バンクス(クリス・ロック)はある事件により、出世街道から少し外れてしまっている模様。中堅となると、周りは優秀だけれども仕事の向き合い方に疑問を持つようになる。組織の不満から逃れるように、仕事で手柄をいち早く挙げることに執着し、仲間に噛み付いたり皮肉を言ったりしている。

そんな彼の前にティファニーの箱のようなものが届く。中に入っているのは指輪でも香水でも、クロワッサンでもない。ジグソウの模倣犯と思しき人物からの挑戦状だ。USBを筆頭に、次から次へとジークの仲間の指やら皮膚やらが送られてくる。

彼にアサインされた相棒と共に犯人を追うのだが、あと一歩のところで捕まえられず、警察の拷問死体の山が築かれていく。

本作は、ハードなバイオレンス映画に留まることなく、重厚なポリスストーリーに注力している。

例えば、周囲に毒づくジークがアサインされた後輩ウィリアム(マックス・ミンゲラ)と現場検証に地下鉄へ向かうシーンがある。階段を降り、プラットホームを歩きながら仕事の話から他愛もない世話話へ繋げる部分を長回しで描いていく。これにより、嫌々ながらも仲間と一緒に問題解決しようとする、非一匹狼タイプであることが分かる。悪口、暴言は吐くが、後輩には気を使い、褒めたり、子守をしながら仕事しているウィリアムに対して心配したりする。有能な警察官であることがよく分かるのだ。

しかしながら、調査をする中で殺害されていく警察官の中に汚職の陰がチラつき始める。『トレーニング デイ』のデンゼル・ワシントンのように有能な警察官が、こっそり悪事を働き、それを隠蔽していることが明らかとなっていくのだ。

と同時に、猟奇殺人犯の挑発によって追い詰められていくジークも無意識に暴力的な方法で捜査をしていく。組織に抗うつもりが、組織に染まっていくスパイラル(=渦)を本作は描いているのです。それも多層的に。

同じく正義感に燃え、家に帰っても上司の期待に沿うよう仕事をこなすウィリアムはかつてのジークである。回想シーンでは怖い父の背中を見ながら必死に仕事に食らいつく様子が描かれる。組織の有能だが意地悪な仲間たち、今や悠々自適に暮らしておりジークの目標を失わせるような存在となってしまった父との間でもがき苦しむ姿は、中堅社員の悲哀として働く者に刺さることでしょう。

もちろん、従来通り激しい拷問シーンもある。その内容は是非とも劇場で確認してほしい。

日本公開は2021/9/10(金)です。

※アスミック・エースさんより画像提供

 

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