リカ ~自称28歳の純愛モンスター~(2021)
監督:松木創
出演:高岡早紀、市原隼人、内田理央、尾美としのり、マギー、佐々木希etc
評価:55点
おはようございます、チェ・ブンブンです。
今週は『ザ・ファブル 殺さない殺し屋』、『ヒノマルソウル~舞台裏の英雄たち~』、『クワイエット・プレイス 破られた沈黙』と話題作が目白押しである。そんな中、Twitterでなにやら怪しげな映画が公開されていることを知った。
『リカ ~自称28歳の純愛モンスター~』
タイトルから強烈な臭気を放つ。ポスターヴィジュアルを見ると、映画のポスターというよりかは、綾瀬はるかがスーパーヒーローを演じるコカコーラCMのパロディかなと思うチープさが私の心をゾクゾクさせました。ジャンプスケア映画は苦手なので、『クワイエット・プレイス 破られた沈黙』をパスしてこちらを観ることにした。尚、興味ある方は何も頭に入れず観てほしい。といわけでネタバレ感想とします。
『リカ ~自称28歳の純愛モンスター~』あらすじ
高岡早紀主演で2019年10月に「リカ」、21年3月に前日譚「リカ リバース」が放送されたドラマシリーズの劇場版。五十嵐貴久のサイコスリラー小説「リカ」シリーズを原作に、19年版ドラマ最終回のその後が描かれる。山中でスーツケースに入った本間隆雄の死体が発見された。本間は3年前に逃走犯の雨宮リカに拉致され行方不明になっていた。警視庁捜査一課の奥山次郎は、潜伏中のリカをおびき寄せるため、偽名を使ってマッチングアプリでリカを探し出すことに成功するが、次第にリカにのめり込んでいく。奥山の婚約者でリカを追う警察官の青木孝子は、捜査に平行し、リカにのめり込んでいく奥山を心配し、先輩の梅本尚美とともに奥山の部屋へと向かうが……。リカ役を高岡が演じるほか、奥山役を市原隼人、青木役を内田理央、梅本役を佐々木希がそれぞれ演じる。
上から来るぞ!気をつけろ!
居酒屋での泥酔状態になりながら企画会議が行われる。酒の力もあってか、常識を逸脱したアイデアが次から次へと湧き出て来る。これを全部盛り込んだら面白くなるんじゃないだろうか?企画は決まった。しかし数日後、完全にシラフな状態で企画を進めていくと「これで果たしていいのだろうか?」と迷いが生じる。だが、一度動いたプロジェクトは簡単に止められないので、シラフな状態で無難な落とし所を探し始める。
まさに、この映画はこんなプロセスでできたのではないだろうか?次から次へと想像の斜め上をいく狂気が押し寄せて来る。しかし、それが点、つまりは一発芸としか機能しておらず、その点と点を結ぶために間延びした台詞回しが体感時間を長くさせるのだ。
ネタ自体は面白い。冒頭から、目玉や腕を並べた人体福笑いを繰り出して来て笑を堪えるのに必死だった。高岡早紀が20~40代の表情を巧みに切り替えファムファタールを怪演する。そんなヴィラン・リカには、「興奮すると腕のアザが紅く光る」とか「恋文方式の出会い系サイトでないと誘い出すことができない」、「3Dプリンタで恋人の人形を作って欲情するのが趣味」といった要素がマシマシで備え付けられ、終いにはマーベル映画のヴィランなりに高速移動&空中浮遊をし、空から毒注射を刺そうとしてくるアグレッシブっぷりを魅せていく。
一方、警察側もどうかしており、佐々木希演じる尚美が孝子(内田理央)の恋愛ライフを茶化すあたりはアンジャッシュの渡部建の不倫事件を踏まえると不気味なものがある。表層的なところで語れば、リカを逮捕する為、出会い系サイトに登録する奥山次郎(市原隼人)は偽名として最初「奥山刑事」と設定しようとし、少し我に返って「奥山ケイジ」とするあたりは軽率過ぎてニヤリとさせられます。しかも、リカを口説く時には官能的な言葉を投げかける。爆笑である。
そんなリカとケイジはバレるかバレないかサスペンスの上に、ケイジが風呂場でチェーンソーで心臓抉られて死亡するのだが、その際のリカのドヤ顔しながらチェーンソーに電源を入れる場面は腹筋が崩壊すると思いました。
こう要素を並べると面白い映画に見えるかもしれませんが、いかんせん爆笑ポイントとポイントを繋ぐドラマが全て説明台詞なので間延びしてしまう。リカがどうしてサイコパスなのかも説明してしまう。ここは、得体のしれないモンスターのままであってほしかった。恐らく、企画会議を繰り返すうちに説明描写が増えてしまったのが敗因だろう。
なので、結局ぶっ飛び映画としては吹っ切れておらず不完全燃焼に終わってしまった。でも『クワイエット・プレイス 破られた沈黙』よりこちらを選んで正解だったなと思いました。五十嵐貴久の原作小説もドラマ版も観ていませんですが問題ありません。
※映画.comより画像引用