泥酔夢(1934)
DAMES
監督:レイ・エンライト
出演:ジョーン・ブロンデル、ルビー・キーラー、ザス・ピッツ、ディック・パウエルetc
評価:80点
おはようございます、チェ・ブンブンです。
バズビー・バークレーをご存知だろうか?
『グレイテスト・ショーマン』や2017年版『美女と野獣』を始め多くのミュージカル映画で使われ、『コララインとボタンの魔女』のように非ミュージカル映画でもそれっぽい演出を魅せる際に上から万華鏡のように撮るショットを発明した人物である。バズビー・バークレーは豪華絢爛な舞台装置と狂ったようなマスゲーム演出を得意とし、世界恐慌時のハリウッド映画界を支えていた。そんな彼の狂いに狂った演出が楽しめる『泥酔夢』をようやく観ることができました。
『泥酔夢』あらすじ
A multimillionaire decides to boycott “filthy” forms of entertainment such as Broadway shows.
訳:億万長者は、ブロードウェイのショーなどの「不潔な」エンターテイメントをボイコットすることにした。
※imdbより引用
バスビー・バークレーの顔芸
正直、バズビー・バークレーの映画は演出が凄過ぎて物語の内容がどうでもよくなりがちだ。『四十二番街』や『ゴールド・ディガース36年』など、バークリーショットや大勢でバイオリンを表現する演出は覚えていても物語は風化しがちである。『泥酔夢』の場合、序盤は退屈なメロドラマが展開される。男が女に振り回されるありがちな話をダラダラと展開していく。
だが、そんな退屈さは後半のレビューシーンで帳消しとなる。
広告にカメラがズームすると、黒背景に顔が映し出される。すると顔がドンドンと分身していきマスゲームが展開されていくのだ。巨大な顔看板を幾何学的に動かす姿の不気味さに衝撃を受ける。今回のテーマは「顔」なので、ありとあらゆる顔芸を見せてくる。
巨大な花をモチーフにした集団アートの中から女がカメラに向かって何度も飛んできたり、大勢で模様を形成したと思ったら急に画面が止まり、紙を破るように人が飛び出してきたりと、3D映画がない時代に二次元から三次元に置換する演出をまくし立てるように描いていく。
他の作品にもある、巨大な建造物を使ってオルゴール人形のように動かす演出も健在で、90年近く前の作品にもかかわらず全く色褪せない衝撃がそこにはあるのだ。これを観てしまうと、序盤の茶番なんかどうでもよくなる。観た人だけが味わえる言語化しにくい異次元がそこにありました。
P.S.大学時代、ミュージカル映画論の授業で本作を観せられたのですが、教授は女の人がカメラに向かって突っ込んでくる演出をサンプリングとして使っていた。折角なら顔看板移動の演出を観せた方が良かったのではと今更ながら思う。