【東京フィルメックス】『D.I.』マイケル・ベイ的大爆発に雑CGヘンテココントの詰め合わせ

D.I.(2002)
Divine Intervention-Yadon Illaheya

監督:エリア・スレイマン
出演:エリア・スレイマン、マナル・ハーデル、ナーエフ・ダヘル、ナジーラ・スレイマンetc

評価:95点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

第21回東京フィルメックスで10年近く観たいと思っていたエリア・スレイマンの『D.I.』を観てきました。「D.I.」とはdivine interventionのことで、「人間の問題に神が介入することで奇跡のように思えること」を表す言葉である。本作は第55回カンヌ国際映画祭で審査員賞を受賞している。確かに審査員長がデヴィッド・リンチなので納得な作品なのですが、想像を遥かに超えるヘンテコな作品であった。尚、本記事はネタバレありです。

『D.I.』あらすじ


イスラエル領とパレスチナ自治区とに分断されたパレスチナ人カップルを主人公として中東問題を膨大なギャグとユーモアを交えて描き、カンヌ映画祭で審査員賞と国際批評家連盟賞をダブル受賞したスレイマンの代表作。原題は「神の手」という意味であるという。
※東京フィルメックスサイトより引用

マイケル・ベイ的大爆発に雑CGヘンテココントの詰め合わせ

男が屋根に瓶を置いていく。やがてそこへ警察が現れる。すると、彼がハシゴを外して、警察官に瓶を投げ始めるのだが、もう一人が裏から回り込み捕まえる。その様子を遠くから写すことで岡目八目的笑みが溢れる演出となる。その男は別の日に、屋根の上に乗っかってしまったサッカーボールを引き裂き投げ返すのだが、その持ち主の親にフルボッコにされる。そして、それが反復されるように再度同様のシチュエーションが描かれる。男三人にフルボッコにされて、最後に銃が放たれるのだがその正体はヘビだった。人間としては凄惨な暴力でありながら、その暴力の矛先が蛇に変わると途端にしょうもなく感じるこの差分の技巧に驚かされる。さて、こんな調子でコントが次々と飛び出し、スパゲッティ配線のようにそれぞれのエピソードに関連していくのだが、驚かされるのはそこにマイケル・ベイ映画的大爆発や、よくTwitterで話題になる異境のCGゴリゴリZ級映画的展開を迎えるのです。

男は車に乗りながら柿と思しきものを食べている。そして食事が終わり、窓から種を投げる。そこに戦車があり、コツンと種があたると、大爆発を起こす。その大爆発がハリウッド大作のような大げさな爆発をするのだ。物語の終盤になると、アクロバティックに射撃している男たちの前に謎の女が現れる。彼女は高速回転しながら空を舞う。男たちは銃を乱射するのだが、『マトリックス』よろしく全弾受け止めて、膨大な投石で返り討ちにし、最後は『シティーハンター』さながらヘリコプターが爆発し女はドヤ顔を魅せるのだ。エリア・スレイマンが画の面白さを信じ、とことんギャグを連ねていく。正直、肝心なイスラエルやパレスチナ問題に対する皮肉部分はよくわからなかったものの、とにかく楽しいが詰まった大傑作であった。

※allocineより画像引用

第21回東京フィルメックス関連記事

『迂闊な犯罪』イランの『イングロリアス・バスターズ』
『イエローキャット』アラン・ドロンになりたい男は映画館を作りたい
【東京フィルメックス】『アスワン/ASWANG』血、血、そして血
【東京フィルメックス】『風が吹けば』ナゴルノ・カラバフの自由は空港にかかっている

ブロトピ:映画ブログの更新をブロトピしましょう!
ブロトピ:映画ブログ更新