粛清裁判(2018)
The Trial
監督:セルゲイ・ロズニツァ
評価:60点
おはようございます、チェ・ブンブンです。
イメージフォーラムで開催中のセルゲイ・ロズニツァ特集。スターリンによって行われた約90年前の裁判を扱ったドキュメンタリー『粛清裁判』を観ました。重くてマニアックなドキュメンタリーでありながら8割以上埋まっていたのが驚きであり嬉しくもありました。
『粛清裁判』概要
国際的に高く評価されるウクライナ出身の鬼才セルゲイ・ロズニツァ監督が、スターリンによって行われた約90年前の裁判の記録映像を基に製作したドキュメンタリー。1930年モスクワで、8人の有識者が西側諸国と結託してクーデターを企てた疑いで裁判にかけられた。これはスターリンによる見せしめ裁判で、撮影された法廷の様子はソビエト最初期の発声映画「13日(「産業党」事件)」となった。発掘されたアーカイブフィルムには、無実の罪を着せられた被告人たちと、彼らを裁く権力側の大胆不敵な姿が記録されていた。スターリンの台頭に熱狂する群衆の映像を加えて再構成し、権力がいかにして人を欺き、群衆を扇動し、独裁政権を誕生させるかを描き出す。
※映画.comより引用
全力で銃殺刑に処する
人々がゾロゾロと法廷に集まってくる。熱工学研究所や空軍アカデミー、組織の技術責任者等9人の男がクーデターの容疑で裁判にかけられたのだ。この裁判はスターリンによる見せしめ、でっち上げの裁判である。茶番でしかない。被告もつらつらと弁護を始めるのだが、それが段々と演劇のような共犯関係が生まれていき、その空間にいる裁判長、被告、そして傍聴者が裁判の熱気に段々と飲まれていく。そして、裁判がひと段落する度に外では大規模な行進が行われる。ドキュメンタリーであり、等身大の現実でありながらも虚構のような異様な空間は、そのまま2時間観る者を揺さぶり続ける。
注目すべきはクライマックスである。決して未来は変わらぬ裁判。当然ながら被告は全財産没収の銃殺刑となるわけだが、長い長い刑の内容を 全員分読み上げなければならず、裁判長が窒息しそうな顔で必死に喋る様子は半沢直樹の香川照之を彷彿とさせる異常さをもっており思わず笑いそうになりました。
一方で、空間が自分の役割を信じこませ、その空間にいる者全員がその役割を全うする様子はとてつもなく不気味で背筋凍るものがありました。
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※映画.comより画像引用
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