チャイニーズ・ブッキーを殺した男(1976)
The Killing of Chinese Bookie
監督:ジョン・カサヴェテス
出演:ベン・ギャザラ、ティモシー・ケリー、シーモア・カッセルetc
評価:80点
おはようございます、チェ・ブンブンです。
映画には出会うタイミングがある。私は、観るタイミングを誤り、10年以上ジョン・カサヴェテスを避けてきた。中学2年生の頃、『フェイシズ』を観賞し、あまりの退屈さから拒絶反応を起こしたのだ。『グロリア』こそ好きだが、それ以来全く触れることなくここまで来た。しかし、『死ぬまでに観たい映画1001本』をコンプリートするためには必須作品だったので、今回意を決して観ました。今出会って正直正解でした。
『チャイニーズ・ブッキーを殺した男』あらすじ
ジョン・カサベテス監督による異色のフィルムノワール。場末のストリップクラブを経営するコズモは、店の借金を完済した矢先にポーカー賭博でボロ負けし、マフィアに莫大な借金をつくってしまう。返済の見込みがないコズモに、マフィアは借金帳消しの条件としてある仕事を持ちかける。それは、敵対組織のボスであるチャイニーズ・ブッキーを殺すことだった。カサベテス監督の盟友ベン・ギャザラが、主人公を哀愁たっぷりに演じる。
※映画.comより引用
サスペンスの裏側
本作は「借金を抱えたクラブのオーナーが暗殺の依頼を受ける」という至ってシンプルなもの。しかしながら本作の8割は、本題そっちのけでコズモの日常が展開されるのだ。まず、暗殺の依頼を受けるまで50分近くかけてクラブの日常を描いていく。少し寂れている、でも人が入れば少し盛り上がる陰日向の空間。哀愁漂う空間で、クラブのオーナー・コズモはクラブ嬢の世話をする。オーディションで、女性の踊りを観る彼を耽美的なショットで形取る。足の動きをじっくりじっくり捉えていく中、遂に女性が顔を露わにする。すると、嫉妬にかられたクラブ嬢がコズモをビンタする。そこに恍惚と輝く、クラブネオン。ありきたりな展開でありながらも、あまりの美しさに惚れ込んでしまう。
そして、暗殺の場面では、敵との激しいドンパチはなく、コズモが虚空を撃つ場面が大半を占めているのだ。これは、ある意味コズモの孤独を象徴するシーン。味方がいない状態、もとい誰にもなのだ迷惑をかけないために敢えて孤独になり最後の戦いを挑むのだ。この渋いアクションシーンは、中高時代に観たら全く分からなかっただろう。そして渋い修羅場を超えた後、映画は30分近い打ち上げシーンが展開される。アクション映画だと、比較的ラストに打ち上げシーンが挿入されるのだが、『チャイニーズ・ブッキーを殺した男』はそれらの映画以上に時間をかけてコズモを祝福していくのだ。
その哀愁と感動のこもったラストは心に染みる。
映画として面白いのかと訊かれたら退屈だと思う。面白さの説明が極めて難しい。しかし、退屈は悪出ないことを本作は証明した。それだけは断言できると言えよう。アルベルト・セラはドン・キホーテの物語の裏側を描いた『騎士の名誉』を撮ったが、物語の裏側をカッコよく魅せるセンスは明らかにジョン・カサヴェテスの方が上手であった。
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