【 #仮設の映画館 】『タゴール・ソングス』100年後も歌は人々の心にあり

タゴール・ソングス(2020)
TAGORE SONGS

監督:佐々木美佳

評価:65点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

《仮設の映画館(ポレポレ東中野)》でラビンドラナート・タゴールのドキュメンタリー『タゴール・ソングス』を観ました。本作は、東京外国語大学でベンガル語を専攻した佐々木美佳がタゴールの歌に惹かれ、フィールドワークを行った様子を撮ったドキュメンタリーです。Twitterでこの作品を知り、またブンブンと同い年くらいの監督が宣伝を頑張っているとのことでとても興味深かったので観てみました。

『タゴール・ソングス』概要


非西欧圏で初めてノーベル文学賞を受賞したインドの詩人ラビンドラナート・タゴールが作り上げた作品の魅力に迫った音楽ドキュメンタリー。イギリス植民地時代のインドを生きたタゴールは、詩だけでなく2000曲以上の歌を作り、「タゴール・ソング」と総称されるその歌は100年以上の時を超え、今でもベンガルの人びとに愛されている。タゴールの歌はなぜベンガル人の心をひきつけてやまないのか。インド、バングラデシュを旅しながら、タゴール・ソングの魅力を掘り起こしていく。監督は本作が初作品となる佐々木美佳。
映画.comより引用

100年後も歌は人々の心にあり

最近の日本のインディーズ映画は、割と世界で戦えるレベルの質感を持った作品が多いなと思っている。10年ぐらい前の地獄のような日本映画界も少しずつ変わってきていることに希望を抱いている。本作が、素晴らしいのは佐々木美佳が培ったベンガル語を駆使して、英語なんかでは引き出せないインドやバングラデシュ人の心にあるタゴールの精神を見事に抽出していることです。

世界最大の人口密度をバングラデシュでは電車の屋根に人が座る程の喧騒としている。人々は貧しいながらも歌に希望を見出している。タゴールの歌や詩は、5才くらいの子どもでも歌えるほど100年以上経てども朽ちることはない。バングラデシュでは国歌《我が黄金のベンガルよ》で皆タゴールのことは知っているのだ。音楽の歴史は変わる。ヒップホップ、ロック、ヘビメタ、デスメタetcあらゆる音楽ジャンルが生まれ、まるでバングラデシュのように混沌としているが、タゴールの哀しみや苦痛を美しく詩に乗せる精神は常に人々の心にあることを映画は捉え続けるのです。

このように『タゴール・ソングス』はタゴールと人々の関係性を高い純度で抽出できているのですが、映画としては勿体無いことをしている。

それは、後半に突然舞台が日本へ変わり、日本で就活するバングラデシュ人との交流となるのだ。そこにはタゴールの要素は希薄で、国際系の大学でありがちなだらだらとした異文化交流が垂れ流されるのだ。その様は質の悪いバラエティ番組とも言え、《貧困》という要素を引き出す為だけにバングラデシュ人が存在するようにしか見えない。もちろん、そうしたくなるのも分からなくはない佐々木監督にとって、このバングラデシュ人との出会いと別れは重要だ。そして思い返せば、この映画におけるフィールドワークも監督のアグレッシブなコミュニケーションの下で成り立っている。インドやバングラデシュパートでは、コミュニケーションによって生まれる文化の継承が上手くいっていたのに対し、日本パートでは全然上手くいっていないのは割と問題だと感じた。

とはいっても、内向きな日本映画界にとって、アグレッシブに外へ飛び出し世界の文化を考察する佐々木監督は貴重な存在だ。タゴールの魅力を十二分に伝えることに成功したドキュメンタリーと言えよう。

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