ハーフ・オブ・イット: 面白いのはこれから(2020)
The Half of It
監督:Alice Wu
出演:リア・ルイス、ダニエル・ディーマー、Alexxis Lemire etc
評価:75点
おはようございます、チェ・ブンブンです。
お家映画は『死ぬまでに観たい映画1001本』攻略か、未知の作品発掘に費やしているため、なかなかNetflix配信作品を追えていない。Twitterの映画ファンに助けられている状態である。どうやら最近『ハーフ・オブ・イット: 面白いのはこれから』が面白いらしいということで観てみました。
『ハーフ・オブ・イット: 面白いのはこれから』あらすじ
アメフト男子に頼まれて、ラブレターを代筆することになった成績優秀なエリー。お陰で彼との友情は芽生えたけれど、彼と同じ女の子が好きな心の内はかなり複雑…。
※NETFLIXより引用
町山さん似のシネフィルの横で恋文二人三脚する者
エリー・チュウ(リア・ルイス)は田舎の学校に通う女子高生。成績は優秀だが、家が貧乏な為、都会の大学進学を諦めてウォールフラワーに徹している。学校の人からは宿題の代行を頼まれる。家計の為にと請け負うが、そこには友情は生まれず孤独にしていた。そんなある日、アメフト部の男子ポール・マンスキー(ダニエル・ディーマー)からラブレターの代筆を頼まれる。学校の華型が自分に用なんて、また都合のいいように使うんでしょと半ば呆れつつも金の為に引き受ける彼女。しかし勉強で触れた中でしか恋を知らない彼女だって恋愛初心者。コミュ障同士二人三脚で恋の駆け引きを行うのだった…
NetflixはA24同様、大手映画会社が多様性多様性と言って取りこぼしてしまった人間のドラマを救い出している。そしてアメリカ映画において、最も陰に追いやられてきたアジア人の存在を救うことで、多様性の新たな道を築き、差別化を測ろうとしている。MITとスタンフォード大学でコンピュータサイエンスを学び、学士号と修士号を取得し、マイクロソフトで働いているAlice Wuの半ば自伝的本作はNetflixの悪い癖であるテレビシリーズ的演出が目立つものの、言葉は流暢だが異文化コミュニケーションが苦手な女の子とアメリカ人なのに言葉を操ることができないアメフト選手の共同作業を通じて、言葉が如何に生き易さの命運を担っているのかを描いてみせた。
そして、この言葉やコミュニケーションを勉強していくツールとして本作では映画や文学が効果的に使われている。意中の女性が映画や文学に詳しいということで『ベルリン・天使の詩』や『フィラデルフィア物語』を勉強し、デートで粗相が内容に万全な体制を整えていく。町山智浩似のエリーの父がいつもリビングで『カサブランカ』やらを観ているのに辟易していた彼女も、積極的に映画を観ていく。また、文学トークができるようにポールと作戦会議を重ねていく。日系イギリス人であるカズオ・イシグロが外国人の振る舞いを繊細に描写した『日の名残り』が登場するあたりからも、本作の重要な肝として映画や文学が使われていることがわかるだろう。
コミュ障にとって、映画や文学は振る舞いを学ぶ最良の教科書だ。パーティや発表会でどのように振る舞えば良いのか、実際に行かなくても擬似的に体験できるのだ。そして、段々と意中の女の子は、スクールカースト上位にいながらも何者にもなれない。なろうとすれば地に堕ちるので、偽りの仮面に己を抑圧していることが分かってくる。
そして、父が英語が上手く話せない中国人ということで成功の人生を掴むことをできなかったことが重ね合わさり、強い《人の振る舞いと他者の反応》の物語となる。『フェアウェル』でも、アメリカ人としての振る舞いと中国人としての振る舞いの狭間で葛藤する者が描かれてきた。
アメリカ映画では、黒人の生き辛さや葛藤は度々描かれてきたが、アジア人の英語の壁や振る舞いの壁というものはなかなか描かれてこなかった。その死角を埋めようとするNetflix。それも上質なドラマを配信していくNetflixはやはり強いなと感じた。
P.S.エリーの父が本当に町山智浩にしか見えなくて困惑しました。
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とても面白かったです。
チャップリンの『街の灯』を連想させるシーンなど、古い映画の名場面が織り込まれていて興奮します。
そして代筆という行為と映画。なんというイマジネーションでしょう。
素晴らしい映画。俳優さんもよかったなぁ。
(=^・^=)