【 #リモ止め 】『カメラを止めるな!リモート大作戦!』上田慎一郎軍団がコロナ禍に放つ光の矢

カメラを止めるな!リモート大作戦!(2020)

監督:上田慎一郎
出演:濱津隆之、真魚、しゅはまはるみ、どんぐり(竹原芳子)、大沢真一郎(大澤真一郎)、秋山ゆずき、長屋和彰、市原洋、細井学etc

評価:80点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

コロナ禍でテレビ局も映画製作現場もロケが行えなくなった時代、どのようにエンターテイメントを作ればいいのだろうか?『カメラを止めるな!』で逆境を武器に変える術をふんだんに盛り込み、映画界に奇跡を巻き起こした上田慎一郎監督とその仲間たちが、この難題に挑んだ。4月中旬頃に製作が決まり、5/1からyoutubeで配信されるかつての日本映画界を彷彿させる爆速製作期間で作られた『カメラを止めるな!リモート大作戦!』を観ました。本作は、《映画》なのか?という問題こそあれど、絶望の淵に立たされている映画界に光を与える作品となっていました。

『カメラを止めるな!リモート大作戦!』あらすじ


新型ウイルスの感染拡大で外出自粛を余儀なくされている日本。そんな中、自宅待機中の映像ディレクター・日暮の元に笹原、古沢の両プロデューサーからビデオ電話がかかってくる。「今月中に再現ドラマを1本作って欲しい」という無茶ぶり…。「家から出れないこの状況で撮影は出来ませんよ」と渋る日暮に、笹原プロデューサーが答える。「スタッフキャスト全員、自宅から一歩も出ず、一度も会わず、完全リモートで作ります」。かくして、完全リモートでの映像制作が始まる…!
FILMARKSより引用

上田慎一郎軍団がコロナ禍に放つ光の矢

例のごとく、胡散臭いプロデューサー笹原、古沢コンビに呼び出される日暮隆之。ネットテレビで番組を製作することとなり、昨今の情勢を見てリモートで撮影してほしいと頼まれる。無茶苦茶な仕事を頼まれてしまったものの、断れない彼はあの愉快な仲間たちを集めて、事件の再現映像を製作する。

本作は、リモートで映画を作ることの大変さと、それを工夫で乗り切る過程を描いている。確かにパソコン画面で進行する映画は『アンフレンデッド』、『search サーチ』といくつか存在するのだが、それらの映画はコロナ禍の映画ではない。完全に外出を制限された中で、役者たちが一度も顔を合わさずに映画を作るのだ。この情勢下でリモートワークが主流となってきたが、人が近くにいないことでより一層コミュニケーション能力が重要となり、コミュニケーションが上手くいかないせいで労働時間が伸びる問題が頻出している事態。そんな状態で映画が作れるのだろうか?普通であれば、できない理由という名のやらない理由を並べてしまうところを、この愉快な仲間たちは様々なケースを並べていき、それをノリと勢いで克己していくのだ。

例えば、犯人が家に侵入する場面では、映画が得意とするカットでもって同一空間を表現できる技法を用いて、視線の向きで加害者と被害者を同一空間に共存させることに成功させている。また撮影は、役者がカメラを持って行う必要があり、どうしても片手が使えない。その問題をフレームの外側で持って解決する。自作自演で犯人に襲われる様子を演出するのだが、巧みにフレームの外に腕の一部を追いやることで、まるで本当に襲われているかのような臨場感を与えているのだ。

しかし、どうしてもDIY映画故に綻びが出てしまう。実際に作った映像とそれを経てツッコミを入れるパートを交互に交えることで、プロセスの映画に置き換えている。それにより、本作における発展途上な部分を映画の魅力へと押し上げることに成功している。

そして、最後にはSNSを駆使し、エキストラを集めるテクニックを披露し、逆境でも映画が作れることを証明してみせた。

とはいっても、これを映画館で見たいかと言われたら否である。正直、Youtuberの動画と大差はない。それでも、実験精神に溢れ、最強の世界を作ろうとする上田慎一郎軍団の情熱には拍手したくなるのです。

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