『貴族降臨 PRINCE OF LEGEND』けん玉ムッシュ、君は誰だい?

貴族降臨 PRINCE OF LEGEND(2020)

監督:河合勇人
出演:白濱亜嵐、片寄涼太、鈴木伸之、清原翔etc

評価:60点

コロナウイルスパンデミックで、次々と映画の公開が延期になり鬱病気味なそこの貴方にLDHが贈るお祭り映画『貴族降臨 PRINCE OF LEGEND』が公開されました。本作は、《王子が大渋滞》というパワーフレーズで話題となった『PRINCE OF LEGEND』の続編で、三代目伝説の王子になった朱雀奏の前に貴族集団がたち憚かるという内容らしい。前作が大好きなブンブンは、当然ながら初日に観てきました。

『貴族降臨 PRINCE OF LEGEND』あらすじ


「HiGH&LOW」プロジェクトの製作陣が、ドラマ、映画、ゲーム、ライブなどを連動して展開する「プリンスバトルプロジェクト」の劇場長編映画第2弾。2019年秋に放送されたドラマ「貴族誕生 PRINCE OF LEGEND」のその後のエピソードが描かれる。夜の世界の中心に位置する町、通称ナイトリング。一介の土木業者だった安藤シンタロウは、この町を代表するナンバー1ホストクラブ「クラブ・テキサス」の代表にまで上り詰めた。自身の名を「ドリー」と改めた彼は貴族として、この世に暮らす弱者たちを守り、すべての人が笑って暮らせる高貴な世界を作ることを決意する。一方、聖ブリリアント学園で「三代目伝説の王子」となった朱雀奏は世界中を奔走し、王子道に邁進していた。貴族と王子、それぞれ頂点を極める2人の男がついに顔を合わせる時がやってくる。ドリー役の白濱亜嵐、朱雀奏役の片寄涼太をはじめとする「EXILE TRIBE」「劇団EXILE」のメンバーのほか、DAIGO、山本耕史らが顔をそろえる。
映画.comより引用

けん玉ムッシュ、君は誰だい?

LDH映画は赤坂太輔が『フレームの外へ: 現代映画のメディア批判』で語る、文字情報に囚われた最たるお手本である。

不要な箇所にテロップを表示し、徹底的にフレームの外側にある世界を魅せない。だから、映画を学問として勉強した方は当たり屋的に本作を観るかもしれない。しかしながら、LDH映画は映画の悪い見本を唯一無二なまでに極め芸術的面白さに満ち溢れている。1秒たりとも飽きさせない謎展開と盛り上がりによって快感を与える劇薬となっている。さて、昨年私が絶賛した王子が大渋滞映画『PRINCE OF LEGEND』の続編『貴族降臨』である。

《スラムのガキから王になれ》と、貴族に取り憑かれた男ドリー(白濱亜嵐)と愉快な仲間たちが聖ブリリアント学園を襲撃する内容なのだが、前作以上に自己紹介しかしていないのだ。

ヴィランの親玉だというのに、周りの仲間たちの存在感が凄すぎて、「わたしはドリー」と何度も何度も自己紹介するのです。

そして、チーム《貴族》が自己紹介すると、次の場面で何故か味方が《貴族》に闇堕ちし、「わたしはラファエル」、「わたしはダントン、以後お見知りおき」と言い始めるのです。

ただ、ドリーの目的は三代目伝説の王子・朱雀奏(片寄涼太)を倒すというしょうもないもので、しかもフランス語の挨拶を並べておけば貴族感出せると思っている痛いだけの人なので、何故仲間が洗脳されたのか全く分かりません。

しかしながら、圧倒的手数で観客を楽しませることだけに特化している本作は嫌いになれない。日本のコメディ映画は、業界人の内輪なノリに収斂している酷い作品が多いのだが、LDHはまず最初に観客を頭に入れているので、部外者でもコールの異様な盛り上がりと上記を逸した展開に惹かれてしまうのです。

とはいっても、本作はあまりにも勿体ない。ケン玉ムッシュ・ジュリアン(勝矢)やコールがお上手な貴族・ピエール(中島健)、ぬいぐるみ鷲掴み男・ノワール(石橋弘毅)など個性的な貴族が一列に並び聖ブリリアント学園の生徒と対峙する。『家庭教師ヒットマンREBORN!』的熱いチーム戦を期待していたら、ドリーと朱雀奏のフェンシング対決で終わってしまうのだ。なので、貴族サイドの自己紹介映像が全く活かされていないのです。

ケン玉ムッシュのケン玉捌きを観たかったし、そもそも自己紹介シーンが短すぎて「アイツは誰だ?」となってしまう。実際にこのブログ記事を書く際に、公式サイトを見ながら名前確認を行いました。ドリーとダントン、ミシェルしか覚えることができませんでした。

折角、個性的キャラクターを並べているんだから、交わって闘ってほしかった。

これはこれは非常に勿体ないなと思いました。

最後にこの言葉で締め括ります。
《Ce n’est pas un noble.(これは貴族ではない。)》

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