『灯台守の恋』温もりを得た《田舎司祭の日記》

灯台守の恋(2004)
L’Équipier

監督:フィリップ・リオレ
出演:サンドリーヌ・ボネール、フィリップ・トレトン、グレゴリ・デランジェールetc

評価:75点

フランス映画好きな方から、『灯台守の恋』をオススメされたので観てみました。『パリ空港の人々』、『君を想って海をゆく』のフィリップ・リオレがモーリス・ピアラ映画で御馴染みサンドリーヌ・ボネールを主演においたラブストーリーだ。これが中々味わい深い作品でした。

『灯台守の恋』あらすじ


カミーユ(アン・コンザイニー)は生まれ故郷のブルターニュ地方ウエッサン島に戻ってくる。もう今は亡くなってしまっている両親の家を売却するためだ。カミーユと伯母のジャンヌ(マルティーヌ・サルセイ)の二人はその家で最後の夜を過ごすことになる。カミーユは、一冊の本を受け取る。その本はアントワーヌ・カッサンディ著“私の世界の果て”。表紙のイラストが、父親が灯台守をしていたジュマン灯台に似ているのと、伯母の態度が気になった彼女は、その本を読みはじめる。そして、父と母の秘密を知ることになる―。1963年、“世界の果て”と呼ばれるブルターニュ海岸の辺境ウエッサン。ある男が島にやってきて、カミーユの父イヴォン(フィリップ・トレトン)が率いる灯台守たちの一団に加わる。男の名はアントワーヌ(グレゴリ・デランジェール)、アルジェリア戦争帰還兵で、左手を負傷していた。村人は昔イギリスから渡ってきたケルト人の子孫として結束が固い。彼は村人の強烈な敵意に対峙するが、その敵対心を理解し、彼らの拒絶を受け入れ、尊重すらしてゆっくりと耐えていた。静かな微笑をたたえて。そんなとき、イヴォンはアントワーヌと一緒に働き始める。大きな波が灯台に当たっては砕け、天候はあまりにもすさまじく、いっときも心休まるときがない過酷な状況のなか、塔の中でずっと明かりを灯し続ける二人の灯台守。イヴォンは、アントワーヌの人柄を知り、友人として彼を村に迎え入れるが、その後一人の女性がアントワーヌと恋におちてしまう。だが、それはイヴォンの妻マベ(サンドリーヌ・ボネール)だった。マベは、本好きな母の影響もあり、ブルターニュの外の街へ出てみたかった。しかし、代々ジュマン灯台を守る厳格な父のために、灯台守のイヴォンと結婚し、二人でジュマン灯台を守っていく決意をした。イヴォンはマベのために過酷な灯台守の任務についた男だった。無骨で寡黙だが、誰よりも深くマベを愛していた。しかしふたりには、灯台守を継ぐべき子供ができないという悩みがあった。マベの貧しくも幸福な日々に、心を惑わす男が現れた。アントワーヌだった。元時計職人の彼は、繊細な手つきでマベのアコーディオンや自転車を修理し、やさしい微笑の裏側で時折翳りを見せた。抑えられた情熱とイヴォンの存在が、ふたりを思いとどまらせていた。そんなとき、村の祭りが開かれた。20歳のブリジット(エミリー・デュケンヌ)は、小さな島での暮しに死ぬほど退屈し、婚約者がいるにもかかわらず、アントワーヌに誘いをかける。婚約者は激怒し、アントワーヌを激しく殴打する。心配するマベ。祭りの喧騒と喧嘩の後の熱に浮かされてか、ふたりは堰を切ったように木陰で激しく抱き合うが。
映画.comより引用

温もりを得た《田舎司祭の日記》

田舎町にやってきた者が、村社会の閉塞感に悩まされる作品といえば『田舎司祭の日記』が有名だが、あちらが闇の映画だとしたら、こちらは光の映画と言えよう。灯台の映画だしね。小さな村に新しい灯台守としてやってきたアントワーヌ。しかし、彼はアルジェリア戦争の帰還兵で、フランスの戦争帰還者補助のプログラムで派遣されてきた時計職人だった。何の知識もない彼を寄越しやがってと怒りに震える村の男たちをよそに飄々と受け流すアントワーヌは、村人からの険しい顔をものともせずにせっせと灯台守の仕事に励み、さらには漁にも参加したいと村の仕事に意欲的だ。そんな彼の真摯な態度に、共に灯台守をするイヴォンの心が揺さぶられていき、村の一員としてアントワーヌを迎え入れようとする。しかし、イヴォンの妻マベがそんなアントワーヌに恋をしてしまうのだ。

昼ドラもびっくりなドロドロな人間模様を描いた作品にもかからず、荒涼とした景色が映し出されているにもかかわらず、どうも温もりある質感が映画を包み込む。それはなんだかんだいって、仕事をアントワーヌに斡旋しようとする村人だったり、怖い顔をしつつもアッサリと彼に歩み寄るイヴォンやマベの姿が醸し出している味であろう。そして、何よりもロベール・ブレッソンを意識しすぎて、映画の中の仕事よりも心理劇に特化することに陥らず、しっかり灯台守ないし漁師の仕事を描いているところに魅力を感じた。赤灯台のギミックの面白さを強調しつつも、灯りを絶やさない者として働く人間がそこにはある。

The Lighthouse』ではベルイマンやブレッソン的心象世界に特化しすぎて灯台守という設定が死んでいる気がし物足りなさを感じたのですが、これはそういった問題を克服しつつ、閉塞した世界での心情のゆらぎを描いた魅力的なラブロマンスでありました。
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