『心と体と』心が不自由な女性、体が不自由な男性。二人は夢の中でのみ自由に交わる

心と体と(2017)
Teströl és lélekröl

監督:イルディコー・エニェディ
出演:アレクサンドラ・ボルベーイ、ゲーザ・モルチャーニ、レーカ・テンキetc

評価:95点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

先日、ずっと見逃していた『心と体と』を観ました。『私の20世紀』でうっとりするような幻想世界を魅せてくれたイルディコー・エニェディが放つベルリンを制した寓話。なんで本作を見逃したのか、2年前の自分を叱りたいぐらいに素敵な作品でありました。

『心と体と』あらすじ


長編デビュー作「私の20世紀」でカンヌ国際映画祭カメラドール(最優秀新人監督賞)を受賞したハンガリーの鬼才イルディコー・エニェディが18年ぶりに長編映画のメガホンをとり、「鹿の夢」によって結びつけられた孤独な男女の恋を描いたラブストーリー。ブダペスト郊外の食肉処理場で代理職員として働く若い女性マーリアは、コミュニケーションが苦手で職場になじめずにいた。片手が不自由な上司の中年男性エンドレはマーリアのことを何かと気にかけていたが、うまく噛み合わない。そんな不器用な2人が、偶然にも同じ夢を見たことから急接近していく。2017年・第67回ベルリン国際映画祭で最高賞の金熊賞をはじめ4部門に輝いた。
映画.comより引用

心が不自由な女性、体が不自由な男性。二人は夢の中でのみ自由に交わる

コミュニケーションとは、肉体と心の調律のもと成立する。世間ではコミュニケーション、コミュニケーションと叫ばれるが、それは非常に難しいバランスのもとに出来上がっている。本作では、片手が不随な男と、コミュニケーションが苦手な女の恋愛を描いた話だ。食肉処理場でマネジメント職として働く男エンドレは、新しく入ってきた女性マーリアに一目惚れしてしまう。しかし、彼が話しかけようにも、目をなかなか合わせてくれず、ぎこちない。しかし、あることをきっかけに、二人は夢の中で鹿を観ていることが分かる。しかも面白いことに、夢の中で鹿として互いに見つめ合っていたことに気づいく。思わぬ共通点を見つける二人。心が不自由なマーリア、体が不自由なエンドレは夢の中では自由に動き回れることに喜び、「夢の中で会いましょう」と情事を重ねていく。しかし、エンドレは段々と現実世界でも触れ合うことができるのではと徐々に徐々に距離感を縮めていくのだ。

現実とは一歩引いた場所では自由にコミュニケーションが取れる様は、SNSやゲームの世界を通じて描くことが多いのだが、本作の場合は「夢」を物語の中心に置き、寓話性を高めることで、現代人が抱えるコミュニケーション不全を普遍的に際立たせることに成功している。例え、夢の中では自由に交わることができても、早々簡単には生の心と体を交わらせることはできない。だからこそ、マッシュポテトを手でグニュっと潰すように、間接的なモノを使う必要がある。

そういった、何枚も重なる壁を一枚一枚幻想的な音と共に剥がしていき、アレクサンドラ・ボルベーイ演じるマーリアから笑顔を引き出していくプロセスの丁寧さにひたすら魅了されました。

ブロトピ:映画ブログ更新
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