『タレンタイム 優しい歌』多様性のやさしき世界

タレンタイム 優しい歌(2009)
Talentime

監督:ヤスミン・アフマド
出演:マヘシュ・ジュガル・キショー、パメラ・チョンetc

評価:95点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

先日、あつぎのえいがかんkikiでヤスミン・アフマド特集を観てきました。マレーシアを代表する彼女の作品は、観るものに癒しを与えるらしく、数年前の年間ベストに何人もの映画ファンがこの作品を選出していました。遅ればせながら観たのですが、これが非常に素敵な作品でありました。

『タレンタイム 優しい歌』あらすじ


2009年に他界したマレーシアの女性監督ヤスミン・アフマドの長編映画としての遺作となった作品。音楽コンクール「タレンタイム」(才能の時間=タレントタイム)が開催される高校で、ピアノの上手な女子学生ムルーは、耳の聞こえないマヘシュと恋に落ち、二胡を演奏する優等生カーホウは、成績優秀で歌もギターも上手な転入生ハフィズを嫌っていた。コンクールに挑戦する生徒たちの青春を描きながら、マヘシュの叔父に起きる悲劇や、ムルーとの交際に強く反対するマヘシュの母、闘病を続けるハフィズの母など、民族や宗教の違いによる葛藤を抱えた人々の様子を通して、多民族国家としてのマレーシア社会を映し出す。
映画.comより引用

多様性のやさしき世界

《タレンタイム(Talentime)》とはマレーシアで行われる芸術祭りのことらしい。それぞれが歌やダンス、時にはエアギターでショーを行い優秀者を決めるのだとか。さてこの作品はそんなタレンタイムを舞台にしたTale in Timeである。マレーシアは多民族国家で、マレー系、中華系、インド系が入り混じっている。それ故に、言葉もマレー語から英語、広東語、タミル語がごちゃ混ぜになっている。そしてこの映画の中心には、聴覚障がい者との恋が据えられることにより手話が加わる。

そして、ヤスミン・アフマド監督の『細い目』からも強いメッセージを感じる、多様性と共存の関係が色濃く本作にも現れている。タレンタイム参加者はオーディションを受ける。マツコ・デラックス似の審査員長が、「私も拷問だったわ」「ちょとあなた老け過ぎじゃないの?本当に高校生?」と辛辣なツッコミをするものの、女だから云々、アイツは中国人だ云々といったところによる差別はない。いや、この世界にもやんわりとしたマレーシア社会の差別意識が滲み出ているのだが、登場人物は適度な距離をとりコミュニケーションを図っているのだ。成る程、ヤスミン・アフマドの考える多様性とは、他者とほどほどの距離感を保ちつつ人生を楽しむことなんだなと理解する。

さて、彼女は非常に多様性を意識した作品を作りながらも、映画的魅力に満ち溢れている。聴覚障がいの少年が一生懸命想いを伝えようと手話をする。しかし、相手は「あなたはおしゃべりなのよ」と切り返す。静かなる口論というものをサラッと描いてみせてしまうところに彼女の力強さを感じる。また、ガランとした体育館のようなスペースに電気がついたり、また消えたりする場面は、疾風怒濤のように過ぎ去る祭の切なさとワクワク感が漂ってきて、このショットだけで映画を観ている感動が得られます。

そして何よりも、エアギターから自作の曲パフォーマンス、ピアノに二胡に伝統舞踊と多様な演出が所狭しと散りばめられている様は、まるで自分が高校時代の文化祭にタイムスリップしたような気持ちにさせられる。ひたすらに心地よい本作を、なぜ数年前逃してしまったんだろうと今更ながら後悔しました。ヤスミン・アフマド作品は是非ともコンプリートしたいものがあります。

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