『細い目』マレーシアのロミオとジュリエット

細い目(2004)
SEPET

監督:ヤスミン・アフマド
出演:シャリファ・アマニ、ン・チューシ オンetc

評価:90点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

先日、長らくニアミスばかりしてしまい中々観る機会がなかったヤスミン・アフマド映画をあつぎのえいがかんkikiで観てきました。マレーシア映画を代表する映画作家で、『タレンタイム~優しい歌』は数年前にやたらと年間ベストに選ぶ人が多かった。先日、映画飲み会で、「ヤスミン・アフマドなら『細い目』を観た方がいいよ」とオススメされたので早速観て観ました。これが素晴らしい作品でした。

『細い目』あらすじ


2009年に51歳で他界したマレーシアの名匠ヤスミン・アフマド監督が04年に手がけた長編第2作で、アフマド監督作品ではおなじみとなるオーキッドという名の少女が登場する“オーキッド3部作”の第1作。マレーシアの多民族社会を背景に、マレー系の少女と中国系の少年の初恋を大胆かつ繊細な描写で描き、マレーシア・アカデミー賞でグランプリをはじめ6部門、東京国際映画祭で最優秀アジア映画賞を受賞した。香港の映画スター・金城武が大好きなマレー系の少女オーキッドは、露店で海賊版のCDやDVDを売る中国系の少年ジェイソンと出会い、恋に落ちる。民族も宗教も異なる2人だったが、互いの家族に温かく見守られながら、かけがえのない初恋を育んでいく。しかし、民族的出自が原因で大学進学の道が閉ざされているジェイソンは、裏稼業の元締めであるジミーやその妹マギーとの関係を断ち切ることができない。一方、オーキッドにはイギリス留学の日が近づいてきて……。19年7月「伝説の監督 ヤスミン・アフマド 没後10周年記念 特集上映」(19年7月20日~8月23日、東京・シアター・イメージフォーラム)での上映されたのち、同年10月から全国で単独劇場公開。
映画.comより引用

マレーシアのロミオとジュリエット

本作は、いわば『ロミオとジュリエット』をマレーシア社会にローカライズした作品である。マレー系の女の子オーキッドはある日、海賊版DVD売りのジェイソンと一目惚れする。金城武好きな彼女に、ジェイソンは「『恋する惑星』もつけておくよ。面白かったら料金払ってくれ。」とこっそり電話番号を仕込んだDVDを手渡すのです。彼女も彼のことがお気に入り。でも、彼は中国系だ。周りの人は、中国系って細い目じゃん。いいの?と揶揄してくる。しかし、彼女はマレー系界隈の中国人差別に負けんじと彼と接触を試みるのです。一方、ジェイソンは中国系であることのコンプレックスを隠すように《ジェイソン》と自分を呼でいることがわかる。また、外ではチャラチャラエアギターをし、チンピラなんかにも好戦的なのだが、一度デート中に友人とオーキッドが話し込んだりすると嫉妬し始めたりする。

『ロミオとジュリエット』のような大きな抗争と、それに引き裂かれる愛は現実においてそうそうないが、日常の小さなところにだって、種族同士の軋轢があり、それが純粋な恋心を邪魔してしまうものだとヤスミン・アフマドは説いているのです。そう聞くと説教くさくなりそうなのだが、彼女は映画の魔法で多様性を伝えられることを信じている。それだけに演出が非常にユニークなのだ。何故か、彼女はエアギターが大好きらしく、『タレンタイム~優しい歌』同様、ゆるいエアギター描写が差し込まれる。また、同じ場面を重ね合わせることでシームレスに回想場面に移ったり、はたまた階段に家族が座り、それぞれが前に座っている人の髪を結う中にスキンヘッドの大黒柱が入ろうとするユーモアがあります。極めつけは、ラストの悲劇的ながらも救いの描写として演出される、霊的シーンは、ネオリアリズモ的なリアル路線の物語に映画としての面白さを付与することに大きく貢献している。

『タレンタイム~優しい歌』同様、マツコ・デラックス似のあの方がこれまた狂言回しとして良い味を出しており、非常に良い映画体験でした。

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