ジョン・ウォーターズのベストテン2019栄冠に輝いたのは『CLIMAX クライマックス』
この時期になると様々な映画人、媒体が今年のベストテンを発表する。ブンブンが毎年注目しているベストテンに、ジョン・ウォーターズがいます。『ピンク・フラミンゴ』でお馴染みカルト映画の帝王ジョン・ウォーターズのベストテンはバランス感覚が絶妙で毎回惚れ惚れとします。カイエ・デュ・シネマよりなぶっ飛んだ映画を主軸としつつも、ジョン・ウォーターズの口からしか聞けない選出をし、尚且つ『ベイビー・ドライバー』など一般的な映画ファンが選ぶような作品を織り交ぜる。このバランス感覚を買っています。さて先日、今年のARTFORUMで彼の2019年ベストテンが発表されたのでここでまとめていきます。
もくじ
1.CLIMAX クライマックス(ギャスパー・ノエ)
「今年の最高の映画は、「バッド・トリップ」という言葉に新しい意味を与えるぞ。」『ヴィクトリア』に魅せられたギャスパー・ノエが狂気の長回しと、狂ったようなダンスでお送りする狂気の映画はジョン・ウォーターズの琴線に触れたらしく今年のチャンピオンに輝きました。
2.JOAN OF ARC(ブリュノ・デュモン)
「神がいる、彼の名前はブルーノ・デュモンだ。10歳のスターは、カメラレンズを介して貴方の魂に向かって堂々と反抗的に凝視し、教会の権威者を待つことさえしない。」昨年、ベストワンに選んだ『ジャネット、ジャンヌ・ダルクの幼年期』の続編が2位に食い込みました。一度嵌れば、観るたびにベストテンに入れたくなるブリュノ・デュモンの新作は、ジャンヌ・ダルク裁判をドライに描くことで、前作以上に大人の欺瞞を炙り出すことに成功したようだ。本作はもうすぐ発表されるカイエ・デュ・シネマベストテンでもランクインすることでしょう。
3.ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド(クエンティン・タランティーノ)
「アメリカガチモンの犯罪における強迫観念から風呂敷を引き出し、大胆にマンソン殺人者にサイコーで幸せな結末を与え、衝撃的でひどいほどに面白くすることに成功するための重要かつ経済的な成功は真の群衆を喜ばせるぞ。」ハードコアシネフィルは、思わず酷評したくなるだろうタランティーノの新作におけるファンタジーをジョン・ウォーターズはしっかり評価していました。ジョン・ウォーターズは映画ファンの隣人として映画の面白さ、映画がもたらす幸せな寓話を追い求めた作品を評価するようです。
4.ボーダー 二つの世界(アリ・アッバシ)
「この超常的なトロールカップルは、過度に発達した鼻、うじ虫を食べる食事、および小児性愛者の狩猟義務のあごを落とす奇妙な世界に我々を歓迎した。」顔がぐちゃぐちゃな人同士の異常な恋愛をゲテモノ映画の大ボスも気に入った模様です。確かに本作のインパクは恐ろしいものでした。
5.AMAZING GRACE(アラン・エリオット)
「アレサは決して才能に欠けたり、失われたりすることはありませんでした。」ジョン・ウォーターズは毎年ドキュメンタリー枠を設けている。今年は1972年にニュー・ミッショナリー・バプテスト教会で行われたアレサ・フランクリンのゴスペルコンサートを追った『AMAZING GRACE』が選ばれました。ジョン・ウォーターズがアレサ・フランクリンに興味を示しているのは意外でしたが、おそらく昨年亡くなった彼女の追悼として最高の映画だったのでしょう。
6.HAIL SATAN?(ペニー・レイン)
「このクリスマスにTots for Tots(慈善団体)にお金を送らないでください。この異端者にそれを与えてください。」今年は2本ドキュメンタリーがランクインしている。もう一本が、《悪魔の神殿(The Satanic Temple)》と呼ばれるカルト教団の歴史を追ったドキュメンタリーだ。善悪の彼岸にある面白さにも注目しているジョン・ウォーターズらしい選出です。これは確か米国iTunesにあったはずなので、ブンブン興味津々です。
7.PAIN AND GLORY(ペドロ・アルモドバル)
「私に衝撃を与えた最初のアルモドバル映画-少し面白くもなく、メロドラマ的でもないし、色さえ落ち着いているが、成熟の谷を越え、ゲイの精神的健康に対する塾考の自己投影の限界を超えている。」ペドロ・アルモドバルの半自伝的作品であり、『ジュリエッタ』と鏡のような関係にある本作の鋭い自己分析にジョン・ウォーターズは惹き込まれたようです。
8.屋根裏の殺人鬼フリッツ・ホンカ(ファティ・アキン)
「私の配給会社でさえこの映画を非難すると人がいると聞いているのだが、私は賞賛するぞ。とても恐ろしく、グロテスクで、非常によく作られていて、勇敢に撮ったと言えます。」ロッテントマトでは批評家から腐った評価されまくりなファティ・アキン最新作ですが、ここはゲテモノ映画の俺が評価すると言わんばかりに食い込みました。日本では来年2月公開なのですが、映画仲間曰く相当酷いらしい。怖いものみたさで挑戦したくなりました。
9.THE SOUVENIR(ジョアンナ・ホッジ)
「マルグリット・デュラスとフィリップ・ガレルがセックスをし、マーティン・スコセッシが映画の子孫を採用した場合、これは彼らの映画の赤ちゃんのように見えたかもしれません。」これは意外、アメリカ映画界アート映画クラスタの間で異常に評判が高い、心理ドラマが9位にランクインしました。彼の言葉がキレッキレなことから相当気に入ったと見受けられます。
10.ジョーカー/JOKER(トッド・フィリップス)
「無責任だろうか?多分、危険?我々は目撃します。無政府状態を大いに刺激した最初の大予算ハリウッド映画を。」日本では賛否が極端に分かれている『ジョーカー』ですが、本作が持つ問題提起をジョン・ウォーターズはじっくりと観察し味わったようです。今年のラインナップも素晴らしい切れ味でした。
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